ピノッキオ

2003/02/17 松竹試写室
有名な「ピノッキオの冒険」をロベルト・ベニーニが完全映画化。
ベニーニがピノッキオに見えてくれば楽しい映画。by K. Hattori

 『ライフ・イズ・ビューティフル』のロベルト・ベニーニが自ら監督・主演して映画化した、カルロ・コッローディの「ピノッキオの冒険」。もともとフェリーニの『ボイス・オブ・ムーン』に出演していたベニーニが、監督から「ピノッキオ」というあだ名で呼ばれていたことから生まれた企画だそうで、フェリーニとベニーニは映画のためにスケッチを描いたりカメラテストをしたりもしていたという。だがこの企画は監督の死で挫折。その後フェリーニの遺志を受け継いだベニーニが、10年かけて今回の映画を実現させたというわけだ。

 もっともこうした話が本当なのかどうかは、結局のところ当事者にしかわからない。なんだか似たような話を、『A.I.』の時にも聞かされたぞ……。どちらも『ピノッキオ』がらみだというところは、もちろん偶然だろうけれど。

 イタリア映画としては破格の予算をかけて映画化した作品で、イタリアでは『ハリポタ』や『ロード・オブ・ザ・リング』を抜いて興行記録を打ち立てたのだとか。同時に「ピノッキオ」の大ブームが起きて、70年代にテレビ放送されたテレビシリーズもDVD化されたそうだけれど、僕はむしろこのテレビシリーズの方に興味があったりして……。僕も昔テレビで見てました。

 この映画の評価は、「ベニーニが操り人形のピノッキオに見えるか否か」にかかっていると思う。ベニーニは確かにちょこまかとよく動いてイタズラ坊主のピノッキオになってはいるけれど、それが「操り人形」に見えるかどうか個人的には疑問に思う。ベニーニの芝居は「腕白な子供」を再現するものであって、木を彫り上げた人形のギクシャクした動きではないからだ。ピノッキオの派手な衣装が、それだけで「操り人形」であることの記号として機能し得るのか? これによって「ベニーニ=人形」という映画の約束事が素直に飲み込める人は、映画の世界にすぐに入り込めるだろう。だがそうした記号性を素直に受け入れられない人は、この映画のベニーニに違和感を感じると思う。

 僕はすごく違和感を感じた。だからピノッキオの鼻がぐんぐん伸びる有名なシーンも、人形の鼻が伸びるのではなく、生身の人間の鼻が伸びているように見えてしまってちょっとグロテスクに感じたのだ。

 僕がこの映画の世界とうまく気持ちの上で折り合いを付けられるようになったのは、ピノッキオが番犬がわりに鎖につながれたあたりから。ここからは親友のルシーニョロもじつに生き生きしてきて、物語全体がスムーズに流れ始める。これは映画の問題ではなく、僕の気持ちの変化によるものだ。

 たぶんこの映画は1度だけ観るより、2度3度と観た方が面白い映画だと思う。ベニーニのピノッキオにも慣れるし、美術の作り込みなど細部の面白さも楽しめるだろう。機会があれば日本語吹替え版も観てみようかな。

(原題:PINOCCHIO)

2003年3月21日公開予定 丸の内プラゼール他、全国松竹東急系
配給:アスミック・エース
(2002年|1時間51分|イタリア、アメリカ)
ホームページ:
http://www.love-italy.net/pinocchio/

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DVD:ピノッキオ
サントラCD:ピノッキオ
原作:ピノッキオの冒険
原作洋書:PINOCCHIO
関連DVD:ピノッキオの冒険 DVD-BOX
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