リロ・アンド・スティッチ

2003/02/14 ブエナビスタ試写室
宇宙から来た問題児がハワイの女の子と親友になって……。
リロのお姉さんナンが色っぽい。惚れました。by K. Hattori

 今年のアカデミー賞で『千と千尋の神隠し』と長編アニメ部門を争っている、ディズニーアニメ。銀河連邦のマッドサイエンティストが、違法な遺伝子操作実験で生みだした試作品626号。それは高度な知能と桁外れの体力を持ちながら、脳には破壊活動しかインプットされていない小さなモンスターだった。連邦議会は626号の追放を決定するが、そいつは持ち前の悪賢さを発揮してまんまと小型宇宙船での脱走に成功。それはハワイのカウアイ島に墜落し、事故で両親を失った少女リロに「イヌ」として引き取られる。リロが626号に付けた名前はスティッチ。だが銀河連邦はこの危険な動物を処分すべく、地球にハンターを送り込むのだった……。

 物語の主人公は姉とふたりで暮らす幼い少女リロと、スティッチと呼ばれる小さな青いモンスター試作品626号。このふたりは自分の置かれている状況もわきまえず、気分次第ですべてをぶち壊しにしてしまうという点でうりふたつだ。映画の前半ではリロとスティッチの共通点が、特に強調されている。すぐに頭に血がのぼる。見境なく殴る。蹴る。引っぱたく。噛みつく。大声を出して走り回る。リロは姉ナンの養育能力に福祉局が疑いを持ち、場合によっては施設行きになるという瀬戸際にある。スティッチも捕まれば追放か処刑という身の上だ。スティッチはハンターから身を隠す手段として、リロの家に住むことを選択する。リロは自分と同じ背丈の友だちとして、そして留守がちな姉にかわる家族の一員としてスティッチに親しんでいく。

 ディズニーアニメの系譜の中では、かなり異質な作品だと思う。何よりも異質に感じるのは、リロの家庭事情がこと細かくリアルに描写されていることだ。そこには甘いファンタジーが付け入る余地が全くない。両親の突然の事故死によって、まだハイティーンの姉ナンに家庭の全責任が押し被さってくる。たったひとりの肉親であるリロを、福祉局の職員が取り上げてしまうのではないかという恐怖。互いに愛し合っている家族なのに、口うるさく姉妹げんかを繰り返すリロとナン。これはこれで、ひとつのホームドラマです。

 こうしたホームドラマの要素と宇宙人の登場するファンタジーの要素が、この映画の場合はあまりうまく噛み合っていないようだ。同じようなホームドラマとファンタジーの組み合わせでは、ワーナーの長編アニメ映画『アイアン・ジャイアント』という成功例がある。これは'50年代のアメリカの小さな町という“ノスタルジー”を接着剤にして、ふたつの要素をドッキングさせた。『リロ・アンド・スティッチ』には、そうした工夫がないように思う。

 キャラクターのデザインには新しさとユニークさを感じる。特にリロの姉ナンと、福祉局の職員コブラ・バブルスのデザインが秀逸。優れたデッサン力が生むリアリズムとアニメの誇張された動きが、見事に一致していると思う。

(原題:Lilo & Stitch)

2003年3月8日公開予定 日劇3他・全国東宝洋画系
配給:ブエナビスタインターナショナル(ジャパン)
宣伝・問い合せ:メイジャー
(2002年|1時間26分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.disney.co.jp/stitch/

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DVD:リロ&スティッチ
サントラCD:リロ・アンド・スティッチ |Lilo & Stitch
イメージソングCD:ベイビー・ユー・ビロング(フェイス・ヒル)
関連CD:CRY(フェイス・ヒル) |CRY (Faith Hill)
関連洋書:Lilo & Stitch
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