処女

2003/02/14 シネカノン試写室
カトリーヌ・ブレイヤ監督の映画はいつだってラストシーンが衝撃的。
今回の映画も最後の最後にあっと驚く仕掛けがあるぞ。by K. Hattori

 『ロマンスX』や『本当に若い娘』などの作品で、女性の目から見た女性の「性」をテーマにしているカトリーヌ・ブレイヤ監督作。2001年のシカゴ映画祭金賞(グランプリ)やベルリン映画祭マンフレッド賞など、世界中で注目された問題作だ。今回の主人公は例によって10代の少女たち。

 主人公は15歳の美少女エレナと、2歳年下で太っちょの妹アナイスの姉妹だ。ふたりは両親と共にバカンスに出かけた村で、イタリア人のハンサムな大学生フェルナンドと知り合う。姉のエレナはあっという間に彼と親しくなり、関係はどんどん進展していく。夜の貸別荘に忍んできたフェルナンドは、エレナのベッドであんなことやこんなこと。それを横目に見ながら、アナイスはまったく蚊帳の外だ。ところがそんな若い恋人たちの関係も、互いの両親に知られることになって大騒動。一家はバカンスの地を離れることになるが……。

 映画は少女の「一夏の体験」をモチーフにしているが、ここには輝く海も青い空もない。別荘地の風景は殺風景で、空気もひんやり冷たそう。空はいつも、どんより曇っているように見える。少女の初体験にまつわるエピソードも、まったくロマンチックに見えない。大学生のフェルナンドが15歳の少女をあの手この手で口説くあたりは見ていてウンザリしてしまうのだが、まぁ自分も同じような状況になったら同じように女の子を口説くかもしれないと思って、なんだか笑ってしまったりもするのだ。このフェルナンド君、自分がセックスの主導権を握っている時はやけに自信たっぷりの口調なのに、少女が自分から積極的に何かを求めてくると途端にびびって腰がひけてしまったりもする。「処女とデキル!」という喜びからか、うわずった調子でわけのわからぬ愛の言葉をささやくあたりは、なんだか見ていて情けなくなってくるよ。もちろんこの情けなさの中には、恐らく自分も同じ状況では同じ反応をしてしまうであろうという情けなさなんだけどね……。あ〜あ。男ってしょうがないなぁ。

 だがそんな微笑ましくも悲しい性の冒険譚は、ある事件をきっかけに終止符を打たれる。その先にあるのは、観客の誰もが「ええっ!そんなのアリですか〜!」と驚愕するラストシーン。ブレイヤ監督のことだからどうせ何かあるとはにらんでいたが、これにはマジで驚かされました。

 映画の邦題は『処女』だが、英語題は『FAT GIRL』という。つまりこの映画の主人公は美少女の姉エレナではなく、妹のアナイスの側なのだ。アナイスの屈折した心理描写に比べると、少女から一直線に女になっていくエレナは屈託がなさ過ぎてちょっと面白味に欠ける。

 エレナ役のロキサーヌ・メスキダと、アナイス役のアナイス・ルブーがものすごい存在感を見せている。メスキダはブレイヤ監督の最新作『セックス・イズ・コメディ』にも出演しているとのこと。それが今から楽しみ。

(原題:A ma soeur!)

2003年3月21日公開予定 シアター・イメージフォーラム
配給:プレノンアッシュ 宣伝・問い合せ:ムヴィオラ
(2001年|1時間26分|フランス)
ホームページ:
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DVD:処女
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