ノー・グッド・シングス

2003/01/23 GAGA試写室
ダシール・ハメットのハードボイルド短編をボブ・ラフェルソンが映画化。
強盗の巣に迷い込んでしまった刑事の運命は? by K. Hattori

 探偵小説作家ダシール・ハメットが「コンチネンタル・オプ・シリーズ」の一編として1924年に書いた短編「ターク通りの家」を、『ファイブ・イージー・ピーセス』『郵便配達は二度ベルを鳴らす』『ブラッド&ワイン』のボブ・ラフェルソン監督が映画化したミステリー映画。ふとしたきっかけで犯罪に巻き込まれる刑事をサミュエル・L・ジャクソンが演じ、犯罪グループの仲間であるにもかかわらず一瞬刑事と心を通わせる女をミラ・ジョヴォヴィッチが演じている。ジョヴォヴィッチは今回も脱いで乳首も丸見え。相変わらず出し惜しみしない女優だ。男性ファンは心して映画を観るように。

 隣家の主婦から家出娘の捜索を頼まれた中年の刑事ジャックは、聞き込みに訪れたターク通りで転倒した老婆を助け起こし、彼女の家でお茶をご馳走になる。だがジャックが人捜しをしている刑事だと身分を告げた途端、彼は何者かに殴られて失神し、気がついた時は居間のイスに縛り付けられていた。なんとその家は、銀行強盗グループのアジトだったのだ。強盗団の首領タイロンは自分たちの計画が警察にばれかけていると考え、すぐにでも大胆な強盗計画に着手しようと決める。狙うのは1千万ドルという大金だ。縛り上げた刑事の監視役に若い愛人エリンをひとりだけ残し、他のメンバーは即座に自分たちの持ち場へと散っていく。はたしてジャックはこの窮地から脱出できるのか?

 入念な強盗計画が仲間割れから内部崩壊するという話はごまんとあるが、この映画ではさまざまなアクシデントから生じる「疑心暗鬼」や「疑念」が、犯行グループの結束を揺るがし計画を破綻させていく。偶然ジャックが強盗団のアジトに飛び込んできてしまい、それを犯人のひとりが捕らえて縛り上げてしまったのがそもそも最初のアクシデントだ。この不測の事態によって、犯行グループは計画遂行を1日早めなければならなくなる。入念な計画がスタート時点で足並みを乱すのだ。ジャックの監視役として、エリンをひとり家に置いておかなければならなかったこと。ジャックが電話に触れたことで、タイロンからエリンに連絡が付かなくなったこと。糖尿病を病んでいるジャックが発作を起こして失神してしまったこと……。用意周到で緻密な犯行計画は、それが緻密であればあるほど、小さな予期せぬ出来事が致命傷になってしまう。

 ドラマを引っかき回していくのは、ミラ・ジョヴォヴィッチ扮するエリンだ。自分が生き残るため、周囲の男たちにすり寄る彼女の姿に、悪意や計算高さはまったく感じられない。彼女は自分を無力な存在だと感じているから、男を頼って守ってもらうのは当然のことだと思っている。彼女は男を頼っている演技をしているわけではない。本当に頼っているのだ。全身全霊をかけて男にすがりついているのだ。こんな女が現れたら、男は誰だって身を滅ぼすに違いない。まさに魔性の女だ。

(原題:NO GOOD DEED)

2003年3月8日公開予定 ニュー東宝シネマ他・全国東宝洋画系
2003年初夏公開予定 シネヌーヴォ(大阪)
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給 協力:タキコーポレーション
(2002年|1時間37分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.no-good.jp/

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DVD:ノー・グッド・シングス
原作:コンチネンタル・オプの事件簿(ダシール・ハメット)
原作洋書:The Continental Op (Dashiell Hammett)
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