ホワイト・オランダー

2003/01/20 GAGA試写室
ミシェル・ファイファー他、豪華女優の競演が見もののドラマ。
娘役のアリソン・ローマンは今後が楽しみ。by K. Hattori

 ジャネット・フィッチのベストセラー小説「扉」を、『嵐が丘』のピーター・コズミンスキー監督が映画化。15歳の少女アストリッドと、たったひとりで彼女を育て上げた美しい母イングリッド。だがその母は恋人を殺した容疑で逮捕され、禁固35年以上という重い判決を受ける。残されたアストリッドは福祉事務所の紹介で里親のもとに送られるのだが、出会う里親がいちいち精神的に問題を抱えた人物。最初の里親スターは身よりのない子供を何人か手元に引き取って育てている敬虔な女性だが、同居している恋人をアストリッドに奪われると邪推してとうとう彼女に銃を向ける。次の里親はテレビ番組のプロデューサーを夫に持つ売れない女優クレア。アストリッドにも何かと親切にしてくれる優しい女性だったが、その優しさは自信のなさと弱さの裏返しだった。夫が自分に愛想をつかして出ていった時、彼女の脆い神経はその事実を受け入れることができなかった。3番目の里親はロシア移民のタフな女で、引き取った子供たちを使用人のようにこき使って自分のビジネスに精を出している。

 母親イングリッドを演じているのはミシェル・ファイファー。娘アストリッドを演じているのは新人のアリソン・ローマン。嫉妬深いスターをロビン・ライト・ペンが演じ、優しいクレアをレニー・ゼルウィガーが演じている。この映画で一番の見どころは、こうした女優たちの華麗な競演だろう。映画の中ではどの女優も、それまでの自分のイメージとは少し違う役を演じているところがミソだ。ファイファー演じるイングリッドは気性が激しく、独占欲も強い女性。彼女は恋人が別の女と付き合っていると知ると彼を毒殺し、娘が里親と親しくなるとその里親に激しい言葉をぶつけて相手を精神的に追い込んでいくという悪魔のような女だ。普段は優しくはかなげな役を演じることが多いロビン・ライトは、キリスト教への敬虔な信仰と、セックスへの欲望と嫉妬深さを同時に持ち合わせるスターを熱演。タフなヒロインを演じることが多いゼルウィガーが、夫の言葉にオロオロと泣き崩れる女を演じるのも新鮮だろう。

 だがこうしたベテラン女優たちを相手に、まったく互角の芝居で対抗してみせるアリソン・ローマンの存在感には感心させられる。一緒にいる女性に合わせて、髪型や服装やメイクが次々に変化していくアストリッド。15歳の無垢な少女が母の逮捕をきっかけにして、酷薄で残忍な社会に投げ込まれるのだ。うかうかしていると他人に食い殺されてしまいかねない世界。偽善と欺瞞の仮面がはがれたところで見える、人間の危険で醜い素顔。やがて彼女は慕っていた母の中にも、別の顔があることに気づく。そして自分の中にも別の顔が……。

 悪い映画ではないと思うが、いかにも「女性映画」という感じが僕は苦手。映画終盤にある裁判を巡る母親との駆け引きも、僕にはよくわからなかった。

(原題:White Oleander)

2003年2月中旬公開予定 みゆき座他・全国東宝洋画系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
(2002年|1時間49分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.white-oleander.com/

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DVD:ホワイト・オランダー
サントラCD:ホワイト・オランダー |White Oleander
原作:扉(ジャネット・フィッチ) White Oleander (Janet Fitch)
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