007/ダイ・アナザー・デイ

2003/01/20 20世紀フォックス試写室
ピアーズ・ブロスナン主演のシリーズ20作目。監督はリー・タマホリ。
見せ場満載で楽しい映画に仕上がっている。by K. Hattori

 007シリーズの20作目にして、シリーズ誕生40周年記念という節目の作品。主演はピアーズ・ブロスナン。ボンドガールに昨年『チョコレート』でアカデミー主演女優賞を受賞したハル・ベリー。監督は『スパイダー』のリー・タマホリ。今回の映画は北朝鮮が悪役に描かれており、当の北朝鮮は国をあげてこの映画を非難し、韓国でも上映中止運動が起きているという。

 武器密売で不当な利益を得ている北朝鮮のムーン大佐を暗殺したジェームズ・ボンドは、大佐の腹心ザオに正体を見破られて捕らえられ、当局からの過酷な拷問を受けることになった。14ヶ月後にようやく解放されたボンドは、組織の機密情報が敵方に筒抜けになっていることを知る。MI6はボンドが拷問で秘密を漏らしたと考え医療施設内に彼を監禁するが、ボンドは自分自身の潔白を証明するために施設を逃れ、彼自身の情報網を使ってザオを追う。

 今回の映画は描写が硬質でややぶっきら棒なところもあるのだが、そのガチガチゴリゴリした質感が、かえってハードな物語にマッチしているようにも思う。繊細さはないが、物語を力強く前へ前へと進めていく馬力があるのだ。ドラマの中にある停滞や矛盾を、強引にぶち破ってストーリーを成立させてしまう力業。映画を観た後で思い返すといろいろ腑に落ちない点もあるのだが、映画を観ている最中はそんなことを少しも感じさせないスピード感。例えばボンドとザオを捕虜交換するという設定なんて、そもそもがかなりおかしいのだ。でもそれを無理矢理に押し通してケロリとしている図々しさには脱帽だ。

 007シリーズはロジャー・ムーア時代に荒唐無稽な秘密兵器が次々飛び出して観客を喜ばせていたのだが、その後ティモシー・ダルトン時代にハードなリアリズム路線に方向転換し、過去に3本作られたブロスナン主演作もアクションが主体で、あまり極端な秘密兵器は登場しなかったように思う。ところが今回の映画は、出てくる出てくる、最新ハイテク秘密兵器の数々! 特に今回はボンドカーが久しぶりに大活躍している。車のあちこちにミサイルや機関砲が仕掛けられているのはもちろん、びっくりするのは『攻殻機動隊』も真っ青の光学迷彩システムだ。ネコの爪のように、タイヤからニュッとスパイクが出てくるのも面白い。今回は他にもさまざまな秘密兵器が登場して、観客を精一杯楽しませようとしている。中には水中用の超小型ボンベのように、007シリーズの過去の作品に出てきたアイテムが再登場するケースもある。

 少々まとまりの悪い映画ではあるのだが、「大人のためのマンガ」に徹している姿勢は観ていて気持ちがいいし、シリーズの過去の作品から引用するようなシーンや、今回が20本目の記念作品であることをネタにしたジョークも面白い。現実の北朝鮮情勢が予想以上に緊迫していることが、この映画最大の誤算ではなかろうか。

(原題:Die Another Day)

2003年3月8日公開予定 丸の内ルーブル他・全国松竹東急系
配給:20世紀フォックス
(2002年|2時間13分|イギリス、アメリカ)
ホームページ:
http://www.foxjapan.com/movies/dieanotherday/

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DVD:007/ダイ・アナザー・デイ
サントラCD:007/ダイ・アナザー・デイ |Die Another Day
主題歌CD:ダイ・アナザー・デイ(マドンナ) |Die Another Day (Madonna)
ノベライズ:007/ダイ・アナザー・デイ |Die Another Day
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