スリーピング・ディクショナリー

2003/01/15 メディアボックス試写室
1930年代のボルネオで英国人行政官と現地の娘が愛し合う。
主演は「ダーク・エンジェル」のジェシカ・アルバ。by K. Hattori

 ジェームズ・キャメロン製作のSFドラマ「ダーク・エンジェル」で人気沸騰のジェシカ・アルバが主演した、ちょっとエロティックなラブストーリー。物語の舞台は1930年代のインドネシア。イギリスの植民地だった南国の島に、イギリスからひとりの若い行政官ジョン・トラスコットが派遣されてくる。同じく行政官だった父親の遺志を継いで、現地に学校を作るのがジョンの夢。だが赴任地で掘っ建て小屋同然の家と共に彼にあてがわれたのは、“スリーピング・ディクショナリー(眠る辞書)”と呼ばれる現地の美しい娘セリマだった。彼女は新任行政官の現地妻として日毎彼に付き添い、夜はベッドに同衾して現地の言葉を教えるのが役目だという。ジョンはこの野蛮な習慣を退けようとするのだが、やがてセリマを受け入れ本当に愛するようになる。だがそれは決して許されることのない、禁断の恋だった……。

 ジェシカ・アルバはもちろんヒロインのセリマを演じている。映画の中にはかなりきわどいヌードシーンもあるのだが、これはどうも代役のようなのでファンの人にはおあいにく様。(あるいは一安心?)彼女はインドネシア人の女性を演じるにしては目鼻立ちがスッキリしていて、純然たる現地の女性には見えない。これはアメリカのテレビ界で活躍している若い女優を、無理矢理インドネシア人女性にしてしまうという無茶な設定に原因があるのかと思っていたら、なんとこれが物語の中で重要な伏線になっていたりして……。

 この映画最大の欠点は、ジョン役のヒュー・ダンシーにある。映画序盤で頭でっかちのインテリ英国人を演じているうちはいいのだが、セリマとの触れあいの中で行政官として大きく成長していく中盤以降に説得力がない。この役はスポーツ選手のような体型の、もっと大柄な俳優が演じた方がいいのではないだろうか。筋肉ムキムキである必要はないけれど、ある程度の肉体性が感じられないと、ジャングルを切り開き、岩山をよじ登り、現地の人たちに混じって互角に山での生活に馴染んでいくジョンという役が嘘っぽくなってしまう。

 こうして映画の中心部に大きな弱点を抱えた作品だが、それを埋めるのが先輩のベテラン行政官を演じるボブ・ホスキンスとその妻を演じたブレンダ・ブレッシンだ。娘役のエミリー・モーティーマーもなかなか上手い。ただしこうした脇役陣の努力でも、ダンシーの弱さは埋めきれないような気が……。

 やはり現代人には“スリーピング・ディクショナリー”という風習自体が奇異な物に感じられ、「結果として本当の愛が生まれたからそれでいいのだ」とはとても思えない。映画にもこの制度が生み出す弊害や悲劇が描かれているけれど、これは表面をちょっと撫でただけに終っているように思う。若い俳優たちを主演させた軽い娯楽映画としては、いささか重すぎるテーマを抱え込んでしまった作品なのではないだろうか。

(原題:THE SLEEPING DICTIONARY)

2003年3月1日公開予定 シネマ・メディアージュ
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
配給協力・宣伝・問い合せ:メディアボックス
(2002年|1時間48分|アメリカ)
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