ゴジラ×メカゴジラ

2002/12/31 日劇2
釈由美子がメカゴジラ(機龍)のパイロットを演じるシリーズ最新作。
ハードに行くならとことんハードにした方がいいよ。by K. Hattori

 ゴジラ映画の鉄則は「シリーズ展開に行き詰まったら1作目に戻れ!」だ。今回の『ゴジラ×メカゴジラ』もこの鉄則を守って、'54年製作の『ゴジラ』第1作目の続編ということになっている。物語の舞台は現代の日本だが、ゴジラの上陸はこれが2回目という設定。ただしゴジラの出現で生態系に乱れが生じたのか、モスラなどの巨大生物がしばしば日本を襲っている。こうした巨大生物に対抗すべく作られたのが、特生自衛隊(対特殊生物自衛隊)という特別部隊。映画のヒロイン家城茜は、特生自衛隊で対ゴジラ用に開発された新兵器・機龍のパイロットだ。演じているのは『修羅雪姫』の釈由美子。作戦中に同僚隊員たちをゴジラに殺されたという心の傷を持つ彼女は、映画の最初から最後までついに一度たりとも笑顔を見せることがない。

 2年前に『ゴジラ×メガギラス/G消滅作戦』を撮った手塚昌明監督が、今回の映画で再びメガホンを取っている。(劇中にちらりと前作のヒロイン田中美里が顔を出すシーンがあるが、物語自体はつながっていないのでもちろん役柄はまったく違う。)前作も軍事シミュレーションみたいなところがあったけれど、今回もその硬質なタッチは健在。ただしこうした硬派なタッチと、ドラマ部分の通俗的とも思える展開がうまくマッチしていない。

 軍事シミュレーションで行くなら、とことんそれで押した方が迫力のある映画になるだろう。ところがこの映画では、ヒロインの不注意で命を落とした上官の弟とヒロインの確執など、いかにもありきたりなエピソードがのさばってしまう弱さが目に付く。こうしたエピソードが出てきてしまうと、死んだ上官の家族関係だの、上司と部下の信頼関係や人間関係がどうなっていたのかなど、いらぬ所に観ている側が気を回さなければならなくなる。これは単に「対ゴジラ作戦に手ひどい失敗をして左遷されていた人間」と、「実戦経験がないまま天狗になっている若い隊員たち」という関係でもよかっただろう。

 特撮シーンについては技術的にかなりこなれてきていると思う。『G消滅作戦』ではまだ気になるアラようのなものが目に付いたのだが、今回の映画では「ありゃりゃ?」という部分があまり観られない。あとはミニチュアの精度とか、カメラアングルの問題とか、きわめて些末な問題になるのだと思う。それより気になったのは、シミュレーション・ドラマとしての不徹底ぶりだろう。これは『宣戦布告』ではないから政治についてあれこれ論じる必要はないのだが、いざゴジラが日本に上陸するとなった時、いかにして戦闘地域の住民を避難させるのか? 住民たちはどんな経路を使ってどこに逃げているのか? 今さら怪獣の足下を逃げ回る群衆を見せる必要はない。必要なのはゴジラと機龍が戦っているビル街が、完全に無人になっているという裏付けだ。でないと機龍の兵器でビルが吹き飛んだ時など、ちょっと心配になる。

2002年12月14日公開 日劇2他・全国東宝系
配給:東宝
(2002年|1時間28分|日本)
ホームページ:http://www.godzilla.co.jp/

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