ディレイルド
暴走超特急

2002/12/26 メディアボックス試写室
ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演のB級アクション映画。
『ロシアより愛をこめて』と『ダイ・ハード』の折衷。by K. Hattori

 スロバキアにある厳戒態勢の研究施設から、ある軍事秘密が盗み出された。盗んだのはガリーナ・コンスタニンという女性泥棒。彼女と秘密をドイツまで護送するため、NATOの秘密工作員ジャック・クリストフがスロバキア向かう。脱出ルートは国境を越えて走る特急列車のみ。偽造パスポートを使って何とか国境を越えたふたりだったが、列車には途中からガリーナの運ぶ荷物を追って凶暴なテロリストグループが乗り込んでくる。彼女が盗んだのは強力な生物兵器のサンプルだったのだ。ふたりが重武装のテロリストたちともみ合う中、サンプルのひとつが破損してウィルスが列車内に広がってしまう。次々に倒れていく乗客たち。その中にはジャックの家族もいた!

 ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演のサスペンス・アクション映画。ヒロインのガリーナを演じているのは、『マルホランド・ドライブ』で記憶喪失の美女を演じたローラ・エレナ・ハリング。この映画は過去のいろいろな映画からアイデアを借りまくっている。ヨーロッパを横断する列車を使って女性を護送するスパイという設定は、007シリーズ2作目の『ロシアより愛をこめて』と同じ。列車内に細菌兵器がばらまかれる設定は『カサンドラ・クロス』。テロリストの人質の中に主人公の家族がいるという設定は、もちろん『ダイ・ハード』から頂戴したものだろう。クライマックスの列車事故シーンは、ヒッチコック英国時代の傑作『間諜最後の日』を思い出させる。

 映画としては明らかにB級だし、映画の作り自体もひどく安っぽい。撮影時の制約によるものだろうが、シーンやカットのつながりが不自然なところもある。またこうした欠点を補って余りある、お話やキャラクターの魅力がこの映画にあるわけでもない。ただし次から次に見せ場が来るので、映画を観ている間はそれなりに退屈せずに済むのも確かだ。もっとも展開の二手も三手も先に読めてしまうため、スリルやサスペンスという意味ではまるで物足りない。退屈はしないが、「映画を観ている間は楽しめる」というほどの力はないと思う。

 見せ場は序盤にある劇場内での追いかけや、そのすぐ後に続くカーチェイスの方が、肝心の列車内でのアクションより面白いと思う。ただしこうしたシーンも準備期間の少なさゆえか粘りが足りない。劇場内には遮蔽物や抜け道になりそうなものがいくらでもあるのだし、場合によってはライトや舞台装置を使ってさまざまなアクションが展開できたはず。あと一工夫ほしかった。また列車内を密室に見せるために、主人公たちが列車の屋根を伝って移動するシーンはもっと後半に持って行ってもよかったと思う。

 それにしてもヴァン・ダムは最近ひどく安い俳優になってしまっている。『サドン・デス』レベルの秀作アクション映画は、もう作れないのだろうか。企画次第でまだまだ生きる俳優だと思うけど。

(原題:DERAILED)

2003年2月15日公開予定
シネマメディアージュ、新宿東映パラス3、キネカ大森
配給:メディアボックス、ギャガ 協力:フルメディア
(2002年|1時間29分|アメリカ)
ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/

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