バースデイ・ガール

2002/11/22 有楽町スバル座
ニコール・キッドマンが謎めいたロシア美女に扮するコメディ。
配役が豪華なことが映画のマイナスになることもある。by K. Hattori

 縁のある人には次々良縁が舞い込むのに、縁遠い人には本当に縁がないのが男女の出会い。特に就職してしまうと新しい異性と出会うチャンスもめっきり減り、なかなかいい人に巡り会えないという人も多いでしょう。勤続10年の銀行員ジョン・バッキンガムも、そうした縁遠い人のひとり。仕事はそつなくこなせるものの、勤務評定はいつも「可もなく不可もなし」といったところ。郊外の一戸建てにひとり住まいで、職場と自宅を往復するだけの生活にはそろそろ飽きた。意を決した彼は、インターネットのお見合いサイトでロシア美女ナディアを紹介してもらうことにする。ところが空港に到着した彼女は、なんとまったく英語が喋れない。とりあえず彼女を自宅に連れ帰ったものの、意思の疎通ができなくては結婚どころではない。だがナディアの強引なリードで一度ベッドを共にしてしまうと、肌と肌を合わせたよしみで互いの気心も知れ、言葉が通じなくても何とか一緒に生活ができそうな気がしてくる。そう思うとナディアの態度はいちいち健気で好ましいものに見えてくる。だがナディアがジョンの家に来て初めて迎えた誕生日の夜、ジョンの家には彼女の友人と名乗るロシア人の男ふたりがやってくる……。

 本来は小規模な予算と中堅キャストで気の利いた小品として作るべき映画が、豪華キャストによっていびつに変形してしまった例のひとつだ。最近では似たような映画として、デ・ニーロとエディ・マーフィ主演の『ショウタイム』という映画があったし、ブルース・ウィリスとビリー・ボブ・ソーントンが共演した『バンディッツ』なども似たような事例だと思う。『バースデイ・ガール』では主人公ジョンを演じるのがベン・チャップリン。ナディアを演じるのがニコール・キッドマンというのが、もう既にこの映画にしてはオーバースペック気味。ところがこれだけならまだしも、ナディアの友人役で登場するのがヴァンサン・カッセルとマチュー・カソヴィッツになると、これはもう明らかに役者ばかりが目立ってしまってお話が重くなってしまう。

 監督・製作・脚本のバターワース兄弟は、それでもこの映画を何とか軽やかなサスペンス調のラブコメディに仕立てようとしているし、それにはある程度成功もしていると思う。ニコール・キッドマンがひとりで健気なロシア美女を演じているうちは、スター映画のお約束として「まぁとりあえず、彼女がロシア人だということにしといてやろう」という気持ちにもなる。でもヴァンサン・カッセルとマチュー・カソヴィッツのコンビは、どう見たって怪しげなフランス人であって、逆立ちしたってロシア人には見えないのです。このふたりが旅先の知り合いなどではなく、もともとツルんでいることもバレバレ。
 
 映画を作るには中心軸はひとつでいい。キッドマンを立てるなら、彼女ひとりを軸にして映画を回すべきだったと思う。

(原題:Birthday Girl)

2002年11月16日公開 有楽町スバル座
配給:日本ヘラルド映画
(2002年|1時間34分|アメリカ)
ホームページ:http://www.birthday-girl.jp/

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DVD:バースデイ・ガール
原作洋書:Birthday Girl
シナリオ洋書:Birthday Girl
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