スパイダー・パニック!

2002/10/09 ワーナー映画試写室
巨大化したクモが人間を次々に襲う古典的な動物パニック映画。
古くさい設定をうまく現代流に料理した。by K. Hattori

 薬物汚染の影響で巨大化したクモが次々に人間を襲うという、モロに'50年代風のB級SFモンスター映画。製作総指揮にローランド・エメリッヒ。製作にはその盟友ディーン・デブリンが参加。これは『ID4』や『GODZILLA/ゴジラ』と同じ顔ぶれだ。しかし今回の監督はニュージーランド出身のエロリー・エルカイェムという無名の新人。彼が映画祭に出品した巨大グモをモチーフとする短篇映画を観て、エメリッヒがそれを長編映画にすることを企画したんだとか。おそらくそのB級魂に共鳴するところがあったのでしょうねぇ……。

 巨大グモの映画としては最近も『スパイダーズ』『スパイダーズ2』そして『スパイダーマン』(これはちょっと違うか……)という映画があったわけだが、今回の映画『スパイダー・パニック!』は登場するクモの数と種類が半端じゃない。なにしろ汚染された場所が、おそらくはアメリカでもそう数がいないであろう「クモ専門ブリーダー」の飼育小屋だった。種類にして数十種、数にして数千匹ものクモが、化学物質で汚染されたエサを食べてみるみるうちに巨大化。「すごいエサを手に入れたぞ!」と喜んでいた飼育場の持ち主は、その本人までがクモのエサになってしまい、やがて飼育小屋を手狭に感じた蜘蛛たちは大群となって、町の地下にある廃坑の中に巨大な巣を作る。クモたちは生きたエサとして次々に人間を襲い、地下の食料庫に運び込んでいく。

 映画の見どころはやはり、次々に登場する巨大クモが人間を襲うシーンだ。特に素晴らしいのは、オフロードバイクで逃げる若者たちに、巨大化したクモがぴょんぴょん跳びはねながら襲いかかる場面。巨大グモはのそのそとはい回るものという観客側の先入観を、ものの見事に粉砕するスピード感。こうしたスピーディーなクモと、タランチュラのようなのっそり型のクモをうまく組み合わせ、さらに足が細いコガネグモやら、巨大なメスが巣を守るクモやら、いろいろなクモのバリエーションがCGで描き込まれている。

 こんなバカバカしい話を大真面目にやるのはそれこそバカなので、この映画では全体にコミカルな仕掛けがたっぷりと詰め込まれている。町の地下に産業廃棄物の処理場を作ろうとする、いかにも悪役風の風体をした町の有力者。心に傷を負って町を出たものの、10年ぶりに戻ってきたドラマのヒーロー。巨大グモの正体について精通している天才科学少年。善良な保安官と町の人たち。いかにもパロディ調なのだ。こうしたモンスター映画には、地域の古い伝説や予言によって町の人たちに警告を与える人(老人のことが多い)が登場することもあるが、それが今回はUFO陰謀説をラジオで放送し続ける男という設定に少しずらしてある。古くさいSFパニック映画の設定を最新CG技術で現代に置き換えた映画でありながら、ただ古い映画の焼き直しではない新しいセンスを感じさせる。

(原題:EIGHT LEGGED FREAKS)

2002年12月14日公開予定 銀座シネパトス
配給:ワーナー・ブラザース映画
(2002年|1時間39分|アメリカ)

ホームページ:http://eightleggedfreaks.warnerbros.com/

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