赤毛のアン
アンの結婚

2002/08/30 松竹試写室
前作から12年ぶりに製作された3作目だが出演者が老けすぎ。
シリーズはこれで完結だろう。ファンは観るべし。by K. Hattori

 ルーシー・モード・モンゴメリ原作の「赤毛のアン」シリーズを、ミーガン・フォローズ主演で映画化した劇場版『赤毛のアン』シリーズの第3弾。1作目の『赤毛のアン』と2作目『続・赤毛のアン/アンの青春』とはかなり毛色の違う、番外編のような内容になっている。これは原作ではアンの子供の世代の物語だった「アンの娘リラ」をもとに、アン本人の物語に改作しているせいだろう。ただし原作「アンの娘リラ」自体が、原作のシリーズ中ではかなりの異色作と言われているから、その影響が映画にも表れているのかもしれない。

 物語は『アンの青春』の5年後ということになっているらしいのだが、製作年の関係で役者たちはもっとずっと老けてしまった。1作目は'86年製作。2作目は'88年の製作。そして今回の3作目は2000年製作なのだ。'68年生まれのミーガン・フォローズは、2作目の二十歳から、今回32歳になっている。ギルバート役のジョナサン・クロンビーは今回34歳だ。もともとこのシリーズはテレビドラマとしてカナダで放送されたもの。本国では『アンの青春』と本作の間に、モンゴメリ原作の「アボンリーへの道」というシリーズが放送されている。今回の『アンの結婚』はそれらが一段落した後で、「もう一度アンを!」という声に応えて製作されたもののように思える。

 上映時間は約2時間半。映画としては長い部類だが、じつはこれはダイジェスト版なのだ。カナダでは3時間5分というDVDが発売されているから、おそらくはそれが「完全版」なのだろう。振り返ってみれば『赤毛のアン』も『アンの青春』も、日本ではまずダイジェスト版が劇場公開されてから、その後「完全版」も劇場公開され、さらにビデオやDVDが発売された。今回の『アンの結婚』も、いずれは完全版がDVD化されるだろう。今回の2時間半バージョンは劇中で時間経過が大幅に省略されていることが多く、ものすごく駆け足に感じる場面もあるし、明らかにつながりが不自然なシーンも多い。物語の舞台の半分以上は、第一次大戦中のヨーロッパ。美しいプリンス・エドワード島の風景を大画面で味わえるシーンは少ないので、それを期待してわざわざ劇場に足を運ぶと失望すると思う。僕は前作『アンの青春』の完全版を観て大いに感動したのだが、今回の映画はちょっとどうかなと思う。

 なんにせよ、物語はどこかで終らなければならない。長い年月をかけて同一キャストでひとつの物語を綴っていくという意味で、このシリーズはカナダ版の「大草原の小さな家」だったのだろうと思う。それが今回終ったのだ。日本で同じことをやっていたのが、倉本聰の「北の国から」シリーズ。これも今年でおしまいだ。「どこかで話にケリをつけたい」「終りを見届けたい」という作り手の気持ちが、こうした完結編を生み出すのかもしれない。

(原題:Anne of Green Gables: The Continuing Story)

2002年9月21日公開予定 シネリーブル池袋他・全国洋画系
配給:UIP
(2000年|2時間27|カナダ)

ホームページ:http://www.an-movie.jp/

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原作:アンの娘リラ
関連DVD:赤毛のアン
原作全巻:赤毛のアン(村岡花子訳・新潮文庫)
原作全巻:赤毛のアン(掛川恭子訳・完訳クラシック)
原作全巻:赤毛のアン(掛川恭子訳・完訳赤毛のアンシリーズ)
参考図書:松本侑子の「赤毛のアン」

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