トリプルX

2002/08/29 東宝東和一番町試写室
『ピッチブラック』のヴィン・ディーゼル主演のニュータイプ・スパイ映画。
主人公が体制にこびないワルという点が新鮮。by K. Hattori

 東西冷戦が終って大きな国家間対立が消滅した現在、アメリカの懸案事項は国際化する巨大犯罪対策になりつつある。アルカイダのようなイスラム過激派組織もアメリカにとって大きな危機だが、社会主義国家が消滅したあと雨後の竹の子のようにあふれ出たロシアや東欧のマフィアたちにも注意しなければならない。彼らの多くは元軍人や本職のスパイだった連中だ。旧体制時代に培った技術と人脈に豊富な装備、そこに裏社会で稼いだ潤沢な資金が流れ込む。

 アメリカの国家安全保障局(NSA)はそんなロシアマフィアのひとつ「アナーキー99」に何度か潜入を試みるが、いずれもすぐに正体を見破られてことごとく失敗。NSAのベテラン局員ギボンズは、訓練を積んでワルの振りをしたエージェントを相手組織にもぐり込ませるのではなく、本物のワルを無理矢理相手組織に送り込んで国のために働かせることを提案。そこでギボンズから白羽の矢を立てられたのが、スリルを求めるために、モータースポーツ、フリークライミング、スカイダイビング、スケボー、スノボなどあらゆる危険に身をさらすトリプルXことザンダー・ケイジという男だった。NSAに捕らえられたXは、刑務所行きを免除されることと引き替えに、局の捜査に協力しなければならない羽目になる。「アナーキー99」に潜入したザンダーが見つけたのは、窃盗や密輸という犯罪の裏に隠れた組織の恐るべき正体だった。

 主人公ザンダー(X)を演じるのは、『プライベート・ライアン』『ピッチブラック』『ワイルド・スピード』などで人気がめきめきと上昇中のヴィン・ディーゼル、彼に仕事を命じる冷酷なNSA局員にはサミュエル・L・ジャクソン、潜入捜査先で出会う謎めいた美女エレーナ役にアーシア・アルジェントという顔ぶれ。この映画の新しさは、主人公が「ワルぶった正義のヒーロー」ではなく、本物のワルだという点にある。ザンダーは人殺しや麻薬ディーラーといった重犯罪者ではないが、自分がスリルを求めるためなら窃盗も家宅侵入も器物損壊もまったく悪いと思わない男だ。「国家のために働けだなんて、冗談じゃないぜ!」という彼が、いかにして潜入捜査を成功させるのか。目的遂行のための捨て駒として敵地に送り込まれたザンダーが、いかにして上役のギボンズを出し抜いて自分なりの筋を通すのか……。

 この映画にはスタントマンが体を張ったアクションがふんだんに盛り込まれている。高い橋からのダイビング。オフロードバイクによる空中戦。スノボとスノーモービルの行き詰まる追跡劇。スノボのシーンは雪崩と合成してますが、基本部分はすべてスタントの実写。燃え上がる小屋の上を高々とバイクが舞い上がるシーンなど、観ていてドキリとさせるフォトジェニックな瞬間なのだ。この手の大規模スタントは、やはりハリウッド映画ならではでしょう。

(原題:XXX)

2002年10月下旬公開予定 日劇3他・全国東宝洋画系
配給:東宝東和
(2002年|2時間4分|アメリカ)

ホームページ:http://www.xxx-triplex.com/index.html

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