ズーランダー

2002/08/22 UIP試写室
ベン・スティラー監督・主演のドタバタコメディはファッション界が舞台。
殺し屋に仕立て上げられた人気モデルの運命を描く。by K. Hattori

 マレーシアに新首相が国民の圧倒的な支持を受けて誕生した。新政権の公約は、労働者の最低賃金を引き上げること。だがこれに脅威を感じたのが、東南アジア諸国に縫製工場を展開する欧米ファッション業界だった。既に各国で労賃の高騰に悩まされているのに、これはもはや死活問題。ファッション業界の重鎮たちは秘かに会議を開き、賃金高騰を抑えるための首相暗殺計画を進めることにした。殺し屋として最適なのは、世界でももっとも間抜けでバカな男。組織から白羽の矢が立ったのは、売れっ子モデルとして3年連続で世界一の栄冠を手にするイケメン男、デレク・ズーランダーだった。

 ベン・スティラー自作自演(監督・原案・製作・脚本・主演)の最新作は、華やかなファッション業界の裏側にうごめく陰謀をモチーフにした爆笑コメディ。何しろベン・スティラーが業界ナンバーワンの男性スーパーモデルで、彼の地位を脅かす売り出し中の若手モデルが『エネミー・ライン』のオーウェン・ウィルソンというキャスティングからして無茶苦茶。しかしそのキャスティングを強引に通してしまう、脚本と演出と演技が三位一体となった馬鹿力。とにかくバカ。とにかくアホ。とにかくアンポンタン。しかしそのバカっぷりが、こちらの感受性の限界を突き抜けてしまうまでの勢いを持っている。

 最初はバカバカしくて笑う。次に呆れて開いた口がふさがらなくなる。次にあまりのバカさに白けてしまう。このあたりまでが感受性の限界。白けるを通り越してもバカをやられると、また笑っちゃうんだよね。この「突き抜けた笑い」は普通の笑いとは違う。オヤジの寒いダジャレも2回や3回なら白けるけれど、これが30連発とか50連発になると爆笑の渦になるのと同じ原理だ。こうなると何があってもおかしい。一度「笑いのスイッチ」がオンになってしまうと、何があっても笑い続けてしまうのだ。

 ただしこの映画の場合、笑いのスイッチがオンになるタイミングがかなり遅い。僕は最後のだめ押しのギャグでようやくスイッチが入った。これがもう少し、あと15分か20分、いやせめて5分でも早くスイッチオンになっていると、もっとたっぷり笑えたのにと残念にも思う。でもまぁこれはこれで満足。この映画を観たおかげで、僕はこの日1日中、どの映画を観ても楽しくて仕方がないという気分になれたのだ。

 この映画のバカっぷりは、それにしても見事。これに比べると同じように「おばか映画」と呼ばれる『オースティン・パワーズ』シリーズがずっと気取って鼻持ちならないものに思えてくる。カメオ出演も『オースティン〜』に負けないぐらい超豪華。一応役があるミラ・ジョヴォヴィッチやジョン・ヴォイト、デビッド・ドゥカブニーなどもすごいけど、台詞のないところやほんのちょい役に、あれまぁと驚くようなスターたちが、時に本人役で、時にちょい役でぞろぞろ出演。参りました。

(原題:ZOOLANDER)

2002年9月14日公開予定 銀座シネパトス
配給:UIP
(2001年|1時間29分|アメリカ)

ホームページ:http://www.uipjapan.com/zoolander/

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サントラCD:ズーランダー
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