ブラック・ナイト

2002/08/12 20世紀フォックス試写室
マーティン・ローレンスが14世紀のイングランドにタイムスリップ。
映画中盤以降はギャグが薄くなるのが残念。by K. Hattori

 マーティン・ローレンス演じるお調子者の黒人男が、中世イングランドのお城に紛れ込んで大活躍するというコメディ映画。21世紀から来た主人公ジャマールを、14世紀のイギリス人は変なやつだと当然思う。ところが最初のやり取りの行き違いから彼をノルマンディー公の使者、つまりフランス人だと思っているから、言葉遣いや作法の違いもすべて「フランス流なのだな」と納得されてしまう。一方のジャマールは、自分が迷い込んだ場所が本物の14世紀の城だとは少しも思わず、近くにできた大がかりなテーマパークだと思っている。扮装や言葉遣いがおかしいのも、すべて遊園地のアトラクション。本物の城も、本物の馬や武器も、周囲に漂う異臭さえも、「さすがに大手の業者はやることが違う」と感心するばかり。そんなこんなで双方の勘違いがへんなところで噛み合うと、誰一人として自分たちの勘違いに気づかないまま事態はのっぴきならないところまで進行してしまう。ジャマールが自分の置かれた立場にようやく気づいた頃、彼は自分が「ノルマンディー公の使者」を演じ続ける以外に生き残るすべがないことを悟るのだが……。

 監督は『恋のから騒ぎ』のジル・ジュンガー。脚本は一応オリジナルということになっているようだが、ベースにあるのはマーク・トウェーンの小説「アーサー王宮廷のコネティカット・ヤンキー」だろう。これは何度かテレビや映画になっているので、あえてこの映画ではトウェーンの小説から離れて、マーティン・ローレンスの芸風を生かした話へと作り替えたようだ。だがそのわりには、映画は後半になるほど面白くなくなる。主人公が本物の14世紀イングランドを「よくできたテーマパークだ!」と感心しているところは面白いのだが、彼がその勘違いに気づいてしまうと話が面白くなくなる。

 主人公と世界の間にある程度の距離感があればこそ、主人公は思い切ってあらゆる行動が出来るのだと思う。例えば最初に勤めていた遊園地では、「いつ辞めちゃってもいいもんね」と軽く考えているから、園長に対して軽口を叩くなどチャランポランな行動が取れるのだ。本物の世界を「ニセモノだ」「作り物だ」と考えれば、そこでどんな陰謀が繰り広げられようと、そこでどんなに血なまぐさい事件が起きようと、主人公は動じることなく堂々としていられる。でも「こりゃ本物だ!」ということになると、主人公は自分の命が惜しくなって思い切った行動が取れなくなってしまう。

 主人公がずっと勘違いしたまま、せめて映画の3分の2ぐらいまでは突っ走ってくれた方がギャグは冴えたと思う。その上で終盤になって、主人公が現実と真剣に向き合うような構成にした方が話はしっくりしたはずだ。

 またこの映画は、最後のひとひねりが足りない。堀に落ちた王様を逆に現代にタイムスリップさせるなど、工夫の余地はまだあると思うのになぁ。

(原題:BLACK KNIGHT)

2002年10月26日公開予定 銀座シネパトス他
配給:20世紀フォックス 宣伝:メディアボックス
(2001年|1時間36分|アメリカ)

ホームページ:http://www.foxjapan.com

Amazon.co.jp アソシエイトDVD:ブラック・ナイト
サントラCD:BLACK KNIGHT
関連DVD:マーティン・ローレンス
関連書籍:アーサー王宮廷のヤンキー(マーク・トウェイン)

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ