DRIVE

2002/07/24 日本ヘラルド映画試写室
SABU監督と堤真一コンビによる第5作目のアクション・コメディ。
今回はSABU作品初のハッピーエンドが待っている。by K. Hattori

 デビュー作『弾丸ランナー』以来、堤真一主演のアクション・コメディ映画を次々に作っているSABU(サブ)監督の最新作は、今回もやっぱり堤真一主演のアクション・コメディだった。SABU監督のこれまでの4作は似たようなモチーフを扱いながら、作品ごとに脚本の構成や演出力に磨きを掛け、その完成度を高めていった。だが別の言い方をすれば、少々マンネリ気味になっていたのも確かだ。堤真一扮する平凡な男がとんでもない事件に巻き込まれ、最後はにっちもさっちも行かなくなって自滅していく。その過程にどんなエピソードを盛り込もうと、脚本の構成をどういじくり回そうと、「堤真一がトラブって自滅」というパターンは同じなんだからどれも似るのは仕方がない。

 今回も堤真一が主演で、彼がとんでもない事件に巻き込まれるところまでは同じ。「やはりいつものパターンか」と思って観ていたら、今回は少し様子が違う。いつもなら終盤に向けて凝縮していくはずのドラマが、今回は中盤から少しずつほどけてくる。ずらりと揃った濃い顔ぶれが、ひとり抜け、ふたり抜けして、最後は堤真一ひとりだけになる。主人公は進退きわまったドツボから抜け出して、最後はハッピーエンドらしいところに落ち着く。そのエンディングに多少のほろ苦さがないわけでもないが、ハッピーエンドには違いない。主人公が幸せになるラストなんて、SABU監督の映画では初めてじゃないの?

 堤真一演じる主人公・朝倉は、何事にも几帳面な性格が原因のひどい頭痛に悩まされている。ところがそんな彼の車に、覆面の男たち3人が飛び込んできた。彼らは4人組で銀行を襲ったのだが、仲間のひとりが裏切り、すべての強奪金を独り占めして逃げ出したのだ。3人はその裏切り者の車を追跡するよう朝倉を脅すのだが、朝倉は制限速度ぎりぎりまでしか車のスピードを上げないという、きわめて順法精神の高い男。猛スピードの車を追いかけるのに、時速40キロまでしか出さないし、一通の道を逆進するような乱暴なこともしない。裏切った男の車はあっという間に視界から消え去り、車の中には朝倉と3人の強盗たちが残されてしまった……。

 切羽詰まって無謀な銀行強盗をした4人が、朝倉とすごしたわずかな時間の中でそれぞれの生きる道を見つけだしていくという構成は、甘いと言えば確かに甘い。でも偶然が重なってドツボにはまるのがSABU作品の特徴だったんだから、その反対に偶然が重なって人間が幸福になる……、少なくとも幸福になる糸口を見つける話をSABU監督が作ったっていいじゃないか。主人公たちがどんどん不幸になっていくSABUの映画が、僕は嫌いじゃなかった。でもそればっかりは嫌なんだ。キライじゃないけど、イヤなんだ。

 登場する人たちがそれぞれのささやかな幸福の中に戻っていくこの映画を、僕はSABU監督の新しい一歩だと受け止めている。

2002年8月24日公開予定 テアトル新宿
配給:日本ヘラルド映画
(2002年|1時間42分|日本)

ホームページ:http://www.sabu-drive.com/

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