トロワ・ゼロ
サッカー狂時代

2002/06/21 パシフィコ横浜
若き天才サッカー選手と素人代理人が名門チームに殴り込み。
サッカー界の裏側を描く仏版『ザ・エージェント』。by K. Hattori

 ケチな罪で刑務所に入っていたマニュは、そこでハンガリーからの移民ティボールに出会う。彼はサッカーの天才。夢はフランス代表選手としてワールドカップに出場することだという。ティボールの才能を一目で見抜いたマニュは、自分が代理人になって彼の夢を叶えてやろうと決意。一足先に刑務所を出たマニュはそれまでのヤバい商売から足を洗い、細いコネをたどってティボール売り込みに動き出す。そこで彼が紹介されたのが、一流の代理人コロナだった。彼は数年前に起きた“ある事件”がもとで業界から一時身を退き、今はブラジルで暮らしているという。マニュはブラジルまでコロナに会いに行き、ティボールの才能について熱く語るのだが、「天才などいくらだっている」とてんで相手にされない。ところがマニュがパリ・サンジェルマンの代理人マルベロの名を出した途端、コロナの目の色が変化する……。

 ワールドカップでサッカー人気が盛り上がることを当て込んで作った、フランスのコメディ映画。監督はこれが日本初登場のファビアン・オンテニエンテ。マニュを演じるのは『ジェヴォーダンの獣』のサミュエル・ル・ビアン。コロナ役は『ル・ブレ(原題)』にも出演しているジェラール・ランヴァン。天才サッカー選手のティボールをロラン・ドゥーチェが演じ、パリ・サンジェルマンの代理人マルベロをジェラール・ダルモンが演じている。

 才能のあるスポーツ選手と、その契約交渉をする代理人(エージェント)の関係を描いている点で、この映画はトム・クルーズ主演映画『ザ・エージェント』のフランス版みたいなものだ。アメリカの花形スポーツはアメフトで、フランスの花形スポーツはサッカーという違いがある。主人公側は選手との信頼関係を誠実に守ろうとするが、ライバルになる別の代理人はお金のことにしか興味がないという人物配置も『ザ・エージェント』と同じ。もっともこれは、スポーツ選手の代理人を主役に映画を作れば、必然的にこうなるだろう。

 フランス人と日本人とのサッカーについての考え方の違いが、これほどよくわかる映画もないように思う。日本ではヨーロッパのチームで活躍している選手が契約を解除されたり移籍されたりするたびに、やれ「解雇」だの「クビ」だのという言葉が飛び交うのだが、この映画の中では選手の移籍問題がいとも簡単に行われている。今日一緒にプレイしていたチームメイトが、明日はまったく別のチームに移籍するなど日常茶飯。こうした移籍を繰り返すことで、選手はその値打ちを上げたり下げたりする。選手はチームの一員である前に、まずひとりのプロスポーツ選手なのだ。世界中から選ばれた一騎当千の強者が集合離散を繰り返すのがプロサッカーであり、世界中に散らばっている自国の選手が4年に1度だけひとつのチームにまとまるのがワールドカップなのだ。

(原題:3 zeros)

第10回フランス映画祭横浜2002
配給:未定
(2002年|1時間37分|フランス)

ホームページ:http://www.unifrance.jp/yokohama/

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