短篇映画特集
フランス映画祭横浜2002

2002/06/21 パシフィコ横浜
アニメ、コメディ、ドラマまで、多彩な短篇作品6本を上映。
最後に上映された『スカッシュ』がお気に入り。by K. Hattori

 毎年楽しみにしているフランス映画祭横浜の短篇映画特集。この特集はいつも作品のレベルが粒ぞろいで、つまらない長編映画何本分にも匹敵する楽しさを味わうことができる。今年は80本の候補作の中から、6本の短編を選んだのだとか。以下、上映順に簡単な内容と感想。

 12分の短編アニメ『クイン・スクエア』は、団地内の公演でシーソー遊びをする兄妹と、その騒音に腹を立てた男の物語。あの手この手でシーソーの騒音に対抗しようとした男は、最後にとうとう銃で少女を撃ち殺す。その様子を見た近所の人々は、今度は寄ってたかって犯人の男を殴り殺す。死んだ男は地獄に行くのだが、そこには天国に行った少女のシーソー遊びの音が……。子供殺しにも驚いたが、そのあと犯人が殴り殺されるのにはもっと驚いた。

 『優しい心』は古い家を売ってヨットを買おうとする夫婦の話。ところが訪れる客は揃って家に文句を言うばかりで、ちっとも買う意欲を見せてくれない。最後に訪れた若い夫婦は家をたいそう気に入るのだが、彼らにはお金がない。売り主の夫婦は若いカップルのために売値を少し下げてやる。ところが無事にヨットを買った夫婦がもとの我が家に来てみると……。アイデアは面白いし演出もまずまずだが、ほんの少しテンポが悪いような気がする。11分。

 デパートの下着売り場を訪れた女性が、あれこれと買物に迷ったあげくとった行動とは……という『ランジェリー』は19分の作品。下着の試着という禁断の行為に足を踏み入れるスリル。隣の試着室で、別の客が下着の試着をとがめられる場面に遭遇するサスペンス。一度物語が終ったあと、エピローグとして挿入されるワンカットも効果的。

 CGアニメ『タウの死』は、砂漠に打ち上げられた巨大なクラゲとクジラのあいのこのような生き物が、静かに息絶えていく様子を描く11分の作品。周囲の動物たちが、この巨大クラゲを何とか助けようとしたり、逆に襲ってきたりと事件が続く。生物のデザインにユニークさを感じるが、その程度かな。

 『銅の舌』というわずか4分の映画は、議会で弁舌を振るう議員の姿を、ジャズにあわせて巧みに編集してみせる楽しい映画。会議場のざわめき。飛び交う野次。議長の発言。そして演台に立った議員の演説。この演説をトランペットの長いソロ演奏で表現するアイデア。じつに面白い。

 最後に上映された『スカッシュ』は上映時間27分と、今回の短篇特集の中ではもっとも上映時間が長い。だがその面白さは他を圧倒していた。会社の上司に誘われてスカッシュをやることになった男が、ゲーム中にねちねちと上司から嫌味を言われたり嫌がらせを受けたりする。挙げ句の果てに「このゲームに勝てないならクビにする」と言われるのだが……。最後の最後まで気を抜けない張りつめたサスペンス。これは傑作です!

(原題:Les courts metrages)

フランス映画祭横浜2002
配給:未定
(2002年|計1時間24分|フランス)

ホームページ:http://www.unifrance.jp/yokohama/

Amazon.co.jp アソシエイト

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ