おぎゃあ

2002/06/11 映画美学校第2試写室
妊娠した少女が自らのルーツ沖縄で赤ん坊を生む話。
フワフワ甘い綿菓子のようなファンタジー映画。by K. Hattori

 恋人の子供を妊娠したのに、風来坊の彼はそれも知らずにぶらりと旅に出たまま戻ってこない。唯一の肉親だった祖母がなくなり一人っきりになってしまった19歳の仲里花は、お腹の子供と一緒に祖母の郷里である沖縄の小さな島に渡る。そこには行方不明の恋人が立ち寄った形跡もある。それに祖母の遺言によると、なんと島には死んだはずの花の母親も、別の男と元気いっぱいに暮らしているらしい。花ははたして恋人に会えるのか。一体全体、花の母とはどんな人なのか。

 ヒロインの花を演じるのは、NHK朝の連ドラ「オードリー」でヒロインを演じていた岡本綾。映画はこれが初主演だが、鹿島勤監督の『いちご同盟』でマドンナ役の少女を演じていたのが彼女なんだとか。そう言われても、まったく印象が一致しないんですけど……。がに股で走り回る生命力あふれる母親を演じるのは、ベテランの余貴美子。義理の妹マリーを演じるのは、古厩智之監督の『まぶだち』に出演していたという阿久根裕子。お人好しの郵便局員を光石研が演じ、ヒロインに優しい言葉をかけるつもりでいつもバツの悪い思いをする若い医師を萩原聖人が演じ、マリーの恋人の父親を塩見三省が演じている。豪華なメンバーと言うほどの顔ぶれでもないが、それなりに知名度と実績のある人が多いので、こんなにフワフワした話なのにドラマの骨格がぐらつかない。監督は『富江replay』の光石冨士朗。

 正直言って、僕はこの映画が何を言いたいのかさっぱりわからない。ヒロインの身に降りかかった望まない妊娠という事件を、なるべくポジティブに描こうとしていることはわかるし、お腹の中に芽生えた小さな命をかけがえのないひとつの「生命」として描こうとしているのもわかる。ヒロインの妊娠初期からお腹の子供の分身として三浦涼介演じる不思議な少年を登場させ、本来は目に見えない胎児と母親の交流を、カメラの目に映るものとして描いたのは工夫だろう。でもこの不思議な少年が、ただ主人公の周囲をウロウロしているだけで、特にヒロインに何らかの語りかけをするわけでもなし、具体的に何かしらの手助けをするわけでもなし、ただ単に「私はこれから生まれてくるあなたの子供です」という態度をちらつかせながら出たり引っ込んだりするだけというのが解せない。この少年が存在しなくても、この映画は成立するのではないだろうか? 存在してもしなくても映画の成立にまったく影響のない人物なら、そんなキャラクターは映画に登場しない方がスッキリすると思うけど。

 最近の日本映画では、都会の日常生活の中ではあり得ないファンタジーが成立する異世界として、沖縄を舞台にすることがしばしばある。沖縄の気候風土も、字幕なしには理解が難しいウチナグチ(沖縄方言)も、すべてが「ファンタジー成立のための小道具」になってしまう。少々の話の弱さもデタラメさも、沖縄が舞台なら許されてしまう気安さがある。それはこの映画にも、そのまま当てはまることではないだろうか。

2002年7月6日公開予定 シネマ・下北沢
配給:ジーピー・ムージアム、アースドリームカンパニー
(2002年|1時間37分|日本)

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