タンギー

2002/06/03 東京日仏学院エスパスイマージュ
パラサイト・シングルの息子を独立させようとする夫婦の悲喜劇。
主演はサビーヌ・アゼマとアンドレ・デュソリエ。by K. Hattori

 「パラサイト・シングル」という言葉があるが、それが日本だけの問題ではないのだなぁと思わせるフランスのコメディ映画。ゲイツ夫妻の息子タンギーは28歳の好青年。学校に残って研究論文の準備をするかたわら、語学講師として教壇にも立っている。恋人がいるが、他にも適当に女性をつまみ食いするモテモテ男。両親と同居しているが、その家に女性を引っ張り込んでも平気の平左。「家族はいつも一緒に仲良く」「家族の中に隠し事なし」で28年が過ぎてきたのだ。だがこのままではタンギーがいつまでたっても家から出ていきそうにない。リッチな両親のもとから独立すれば、彼の生活レベルの低下は必定。「わざわざ不便になることがわかっているのに、なんで家から出ていく必要があるの? 愛し合う家族が一緒に暮らしてどこが悪いの?」というタンギーの言い分を、ゲイツ夫妻が認めてきた面もある。だが最近になってゲイツ夫人は、自分の息子の顔を見ると無性に腹が立つのだ。イライラはやがて憎悪に近くなる。「息子を追い出したい!」と意見が一致した夫婦は、家の中が息子にとって居心地の悪いものになるよう、ありとあらゆる手だてを使ってみるのだが……。

 監督・脚本は『人生は長く静かな河』『しあわせはどこ』のエティエンヌ・シャティリエーズ。ゲイツ夫妻を演じるのはサビーヌ・アゼマとアンドレ・デュソリエ。夫婦の天敵となるタンギーを、エリック・ベルジェが演じている。映画の見せ場は、ゲイツ夫妻があの手この手でタンギーの追い出しをはかるエピソードの数々。表面的には「よき両親」の顔を維持しながら、その裏側で次々に息子への意地悪やイタズラを画策する両親の情熱。息子への嫌がらせに新たな生き甲斐を感じ始める両親の姿を、アゼマとデュソリエが実に生き生きと演じている。息子が1週間の北京出張に出かけたとき、パーティで酔っぱらって切れるアゼマの演技などは絶品。息子の顔を見るたび吐きそうになる芝居も身につまされる。対してデュソリエの真価が発揮されるのは、一度は家を出ていったはずの息子が舞い戻ってくるあたりからだ。これで完全に切れたデュソリエは、憎悪と敵愾心むき出しにして息子を徹底的にいたぶり始める。完全にどこかにイッちゃってる目つきが恐い。恐いけど笑ってしまう。

 日本人は経済面と住環境の余裕さえあれば「親子三代同居」など当たり前だから、ゲイツ夫妻がなぜ息子をそこまでして独立させたいのか、理屈ではわかっても感覚的に理解しにくい面もある。これは文化の相違としか言いようがない。フランスはつくづく男女一組が一単位のカップル社会なのだなぁと痛感させられた。まぁこれは、フランス式と言うよりパリ式なのかもしれない。あるいは都会の暮らしというのは、世界のどこに行っても同じようなものなのか。日本も東京は核家族が当たり前。

 映画の最後は「世界にはいろんな文化があるんだよ」というオチで見事なハッピーエンドにして締めくくる。どうなることかとハラハラしていたので、これは嬉しい。

(原題:Tanguy)

2002年6月22日上映予定 フランス映画祭横浜2002
日本配給:未定

(2001年|1時間48分|フランス)

ホームページ:http://www.unifrance.jp/yokohama/

Amazon.co.jp アソシエイトDVD:タンギー
関連DVD:エティエンヌ・シャティリエーズ監督
関連DVD:サビーヌ・アゼマ
関連DVD:アンドレ・デュソリエ
関連DVD:エリック・ベルジェ

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ