パルコ フィクション

2002/05/31 アウラ試写室
矢口史靖監督と鈴木卓爾監督がパルコで作った短編集。
日本版『チューブ・テイルズ』みたいで面白い。by K. Hattori

 『ウォーターボーイズ』の矢口史靖監督と、彼と一緒に『裸足のピクニック』や『ひみつの花園』の脚本を書いていた鈴木卓爾監督が、渋谷のファッションビル「パルコ」を舞台に作った全5話のオムニバス・ショート・フィルム。このふたりは同じ大学の先輩後輩にあたる古くからの知り合いだそうで、DVD発売されている『ワンピース』という短編ドラマ集でもふたり一緒に仕事をしている。今回は全5話のうち3話を矢口監督が、残る2話とエンドタイトル部分を鈴木監督が担当しているという。タイトルはタランティーノの『パルプ・フィクション』のもじりになっているが、同じ舞台設定で切り口を変えて短篇映画のオムニバスを作るという企画の骨組みは、イギリス映画『チューブ・テイルズ』に近いと思う。『チューブ・テイルズ』は全9話で約90分。『パルコ フィクション』は全5話と凝ったエンディング合わせて65分だから、1話ごとの時間配分もそれぞれ10分前後という共通点があるのだ。以下、各エピソードごとに簡単な内容と感想。

 第1話『パルコ誕生』(矢口監督)は、パルコというユニークな名前がなぜ誕生したかを解説するナンセンスドラマ。河川敷に不法投棄されたゴミの山から始まって、あれよあれよと言う間に「風と桶屋」形式の連鎖が始まる。最後のオチも強引なのだが、それ以前の強引さの方が重症なので、思わず納得させられてしまう。第2話『入社試験』(矢口監督)は、パルコの入社試験で謎の封筒を受け取った女性のお話。忘れた頃に封筒を開き、手紙の指示に従って歩いていった先は……。ヒロインを演じた真野きりなの、ノホホーンとした顔がよい。

 第3話『はるこ』(鈴木監督)は、テレビでパルコのCMが流れるたび「は〜い」と返事をしてしまうはるこおばあちゃんが登場するほのぼのドラマ。おばあちゃんを気づかった孫娘が、パルコにCMをやめてもらうか、名前を変えてもらおうとするのだが……。人形を使った荒技にびっくり。小学生カップルのまだ恋とは言えないような淡い恋心が、爽やかな後味を残す。

 第4話『バーゲン』(矢口監督)では、バーゲンでどうしても手に入れたい商品があった店員が、あっと驚く思い切った行動に出る様子が描かれる。途中まではもの凄く面白いんだけど、オチがあっさりしすぎかも。

 そして今回僕が一番気に入っているのが、最終話になる『見上げてごらん』。極端な高所恐怖症に加え、上を見上げるだけでめまいがして失神するスカイスクレイパー症候群のパルコ店員と、彼女を影ながら守ろうとする若い警備員のロマンスを描く。ヒロインを演じた唯野未歩子の影が薄そうな芝居と、警備員を演じた荒川良々のとぼけたキャラクターが好対照。

 すべてのエピソードで登場人物が少しずつ重なり合うという構成で、見ていると「この人物があんなところに」「あの人がこんなところに」という面白さがある。全編ニヤニヤドキドキ。じつに面白い映画でした。

2002年7月20日公開予定 シネクイント(レイト)
配給:パルコ、アーティストフィルム

(2000年|1時間5分|日本)

ホームページ:http://www.parco-city.co.jp/cine_quinto/

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