ハイ・クライムズ

2002/05/31 20世紀フォックス試写室
アシュレー・ジャドとモーガン・フリーマン主演の軍事法廷もの。
最後の15分ぐらいは蛇足だったなぁ……。by K. Hattori

 主演がアシュレー・ジャドとモーガン・フリーマンなので、予告編を観るとうっかりこれが『コレクター』の続編かと勘違いしてしまいそうになるミステリー映画。ちなみに『コレクター』の続編は『スパイダー』。一方本作『ハイ・クライムズ』は、ジョゼフ・フィンダーの小説「バーニング・ツリー」を映画化した作品です。共演は『シン・レッド・ライン』や『オーロラの彼方へ』のジム・カヴィーゼルや、『隣のヒットマン』のアマンダ・ピート。ジャンルとしては法廷ものだが、舞台が海兵隊基地内の軍事法廷という異色作。監督は『青いドレスの女』『母の眠り』のカール・フランクリン。

 敏腕弁護士のクレア・キュービックは、建設会社を経営する夫トムとふたりで幸せな結婚生活を送っている。だがクリスマスの買物のため街を歩いていたふたりは、突然大勢の警官隊に取り囲まれて身柄を拘束されてしまった。じつは夫の名前トム・キュービックは偽名で、本名はロナルド・チャップマンという脱走兵だった。今から12年前、海兵隊の特殊部隊員として対テロ作戦に参加した彼は、エルサルバドルで民間人9人を虐殺して逃走したのだという。だがこれは軍による組織的な陰謀だった。現地で民間人を殺したのは部隊の副官をしていた別の兵士だったが、軍はこの事実を隠蔽するためチャップマンに罪をかぶせたのだ。現地で同じ部隊に所属した元兵士たちの謎めいた死と、不自然なほど一致している証言内容。軍は何かを隠している。クレアは元海兵隊の弁護士だったチャーリー・グライムズと協力して、夫を救うため事件の真相究明に奔走する。だがクレアたちはそこで、激しい妨害に苦しむことになる。

 軍隊内部は一般社会とは別のルールで動く別世界だ。一般社会で法律家として華々しい活躍をしているクレアは、夫にかけられた嫌疑を晴らす戦いの中で、日常のすぐ隣に存在しながら普段はまったく知られることのない「軍隊」の実態を思い知らされることになる。逮捕された彼女の夫は、拘束中に衣服を取り上げられて軍隊の支給品に着替えさせられ、髪の毛も軍隊風に短く刈り込まれ、裁判の中でも階級つきの呼称で呼ばれる。クレアにはまったく想像もできないような世界。この異世界の案内人となるのが、フリーマン演じるグライムズ弁護士だ。彼はクレアを補佐して、軍隊と戦うためのルールを教える。だが彼も完全な人間ではない。元アル中のぐうたら男で、能力はあるのに弁護士としては二流半以下の生活に甘んじている。そんな彼を、クレアが逆に救うのだ。

 少しずつ確実にベールを脱がされていく12年前の事件。裁判過程をつぶさに追いかけていくくだりは、映画の語り口にも澱みがなくてスムーズすぎるほどスムーズ。主人公ふたりの性格付けもよくできているし、脇役まで人物造形の目が行き届いている。クレアの妹と若い弁護士のエピソードもいいスパイスだ。だが裁判が一段落してから後は、面白さのレベルが一気に2段階ぐらいダウンしてしまう。終盤のこの大失速は残念だった。

(原題:HIGH CRIMES)

2002年6月15日公開予定 みゆき座他・全国東宝洋画系
配給:20世紀フォックス

(2002年|1時間55分|アメリカ)

ホームページ:http://www.foxjapan.com/movies/highcrimes/

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原作:バーニング・ツリー(ジョゼフ フィンダー)
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