スコーピオン

2002/05/28 松竹試写室
プレスリー・スタイルの強盗団がカジノから320万ドルを強奪するが……。
ケヴィン・コスナーとカート・ラッセル主演のB級映画。by K. Hattori

 ほんの少し前までケヴィン・コスナーはハリウッドを代表するA級の大スターで、カート・ラッセルはどちらかというとB級映画のスターという位置づけだったと思う。それが今回この映画では、まったく同格の位置づけで共演しているのは、ラッセルの格が上がったのか、はたまたコスナーの格が下がったのか……。おそらくその両方だろう。コスナーの凋落ぶりは観ていて本当に痛ましいほどだ。これはミッキー・ロークの凋落とはまた意味が違う。ロークの場合はそもそも実力以上に人気が出てしまった結果として、その後の人気凋落があったような気もするのだが、コスナーの場合は十分にスター性がありながら、本来彼が持っている資質を発揮できないまま映画に出演し続けているような気がする。もともと演技力で勝負するタイプの俳優ではないから、自分の持ち味をきちんと生かせる役が回ってこないとスクリーンの中で輝けないのかもしれないなぁ……。

 ラスベガスのカジノを襲って大金をせしめた強盗たちがあっという間に仲間割れして、金を巡る殺し合いを始めるというお決まりのストーリー。この手の映画の場合は、映画前半から中盤までが強盗計画の立案と実施にあてられ、終盤になって仲間割れが始まるという構成になっていることが多いのだが、この映画では序盤でさっさと強盗を成功させてしまい、前半には早くも仲間割れが決定的になり、あとはひたすら金の奪い合いが続く。コスナーが演じているのは、強盗団のリーダーであるトーマスという男。この強盗団の中には、カート・ラッセル扮するマイケルという男の他に、クリスチャン・スレイターやデヴィッド・アークエットもいる。かなり豪華な顔ぶれなのです。これを束ねるトーマスには、相当のリーダーシップとカリスマ性が必要になる。ケヴィン・コスナーがこの役を演じることで、曲者揃いの強盗団を束ねるトーマスのカリスマ性に説得力が生まれることが期待されたのだろう。でもこれはもっと巨大な、怪物じみたカリスマ性がほしかった。これはしかしコスナーの責任ではなく、脚本と演出の問題だろう。

 話自体はものすごく陳腐だと思う。この陳腐な話に、なぜこれほどの豪華キャストが必要なのかわからないほど、物語そのものは本当に陳腐なのだ。これは本来なら、実質的な主人公となるマイケル(この映画ではカート・ラッセルが扮している)に中堅の俳優をあてて、あとは無名の俳優にしてしまっても十分に成立するような映画だと思うし、むしろその方が映画全体に軽やかさやスピード感が生まれたようにも思う。スター俳優は映画に華やかさを与えるけれど、逆にそのスターが持っているイメージや放たれるオーラが、映画を必要以上に重たくしてしまうこともある。スターのオーラが映画に重厚さや深みを与えることもあるけれど、この映画にはそんなもの必要ないから、スターの存在が足枷になって映画全体が飛び跳ねることを押さえ込んでしまっていると思う。要するに脂っこい映画になってしまったのです。

(原題:3000 MILES TO GRACELAND)

2002年6月29日公開予定 丸の内ピカデリー2他・全国松竹東急系
配給:松竹 宣伝:問い合せ:ビー・ウイング

(上映時間:2時間|アメリカ)

ホームページ:http://www.scorpion-movie.com/

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