BONES
ボーンズ

2002/05/23 映画美学校第2試写室
スヌープ・ドッグがスラムの英雄を演じるホラー映画。
回想シーンが実に魅力的だ。by K. Hattori

 資産家の父を持ちながらも独立心旺盛なパトリックは、寂れたスラムにある古びた建物をクラブに改装しようと企画。弟のビル、異母妹のティア、親友のモーリスと共に、父親には内緒でこの新しい事業を始める。だがその建物は今から20年前、町の顔役だったジミー・ボーンズが殺されたといういわく付きの物件だった。かつてボーンズの手下だった男は、パトリックたちに「建物に近づくな」と警告。ボーンズの恋人だったパールも、パトリックたちの登場に顔をしかめる。だが若者たちは精力的に働いて、いよいよクラブも開店直前。パトリックはパールの娘シンシアとも親しくなった。そんな時、建物の地下室で殺されたボーンズの白骨死体がみつかる。警察に届けるべきか? いやそんなことをすれば、クラブのオープンに支障が出てしまう。若者たちは死体の存在を封印し、そのままクラブをオープンさせてしまう。

 物語の筋立ては、古風な幽霊屋敷もの。強い怨みと怒りを抱いたまま死んだ人間の霊魂が、再びこの世に蘇って、自分を殺した人間たちに復讐する。地下室の白骨死体が、ボーンズの分身とも言うべき黒犬が人間を襲って肉を食らうたびに、少しずつ肉体を取り戻していくという描写がなかなかグロテスク。黒犬が逃げ去るとき、影が大きなネズミになっているというのも秀逸な描写だと思う。天井から次々に落ちてくるウジ虫。壁から浮き上がってくる地獄の亡者。だがこうした描写は、幽霊屋敷映画としてはそれほど新しくない。

 この映画の魅力は、ジミー・ボーンズが生きていた時代を、回想シーンとして再現している部分だ。ボーンズの保護下で、スラムには生き生きとした黒人文化が花開いていた。人々は商売に精を出し、子供たちは街路を駆け回り、男たちはそんな平和な地域を守るために、ボーンズを英雄視し、その存在を支持していた。だがボーンズの死後、彼の愛した町は消えてしまった。地獄から蘇ったボーンズが夜の町を歩くと、そこにかつて自分の愛した町の姿がオーバーラップするシーンの悲しさ。露天には商品があふれ、貧しいけれど活気にあふれていた町。それが今はゴーストタウンだ。人々が親しみと尊敬を込めてボーンズの名を呼んだ日々は永遠に失われた。今やボーンズを呼び止めるのは、たちの悪いチンピラだけではないか。ボーンズは自分が殺されたことだけに怒りを感じているわけではない。自分が殺されたことで、自分の愛していたものが失われてしまったことを口惜しく思っているのだ。誰かがそれを「奪った」わけですらない。裏切り者たちが、ボーンズの愛するものをメチャメチャに破壊してしまったのだ。

 脚本を書いたアダム・サイモンやティム・メトカーフの意図がどこにあったにせよ、監督のアーネスト・ディッカーソンは完全にボーンズの生きた時代に感情移入している。脚本が目指したものと、監督が描きたいもののネジレを感じてしまう。これはホラー映画ではなく、ブラックカルチャーへの郷愁を歌い上げた映画なのだ。

(原題:BONES)

2002年7月上旬公開予定 新宿武蔵野館(レイト)
配給:ギャガ・コミュニケーションズ 
配給強力:オムロ 強力:クロックワークス

(上映時間:1時間36分)

ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/

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