富江・最終章
〜禁断の果実〜

2002/05/23 東映第1試写室
人気の『富江』シリーズ第4弾は中原俊監督が演出を担当している。
主演は安藤希と宮崎あおい。國村隼も好演。by K. Hattori

 伊藤潤二の人気コミック「富江」の映画化第4弾。タイトルには「最終章」と名乗っているが、本当に最終作になるかどうかはまだわからない。人気があればまだまだシリーズは続くだろう。劇場では地味な扱いのこのシリーズだが、なんでもビデオ市場ではかなりのヒット作になっているらしいのだ。このシリーズの特徴は、1作ごとに出演者やスタッフの顔ぶれが大きく変わること。富江というモンスターの設定は共通だが、演じている女優は1作目『富江』の菅野美穂から始まって、『富江 replay』の宝生舞、『富江 re-birth』の酒井美紀へとバトンタッチ。今回は安藤希が富江を演じているが、彼女は『さくや妖怪伝』の妖怪ハンターから、180度転身して妖怪そのものに姿を変えたわけだ。共演は『EUREKA(ユリイカ)』や『パコダテ人』の宮崎あおい。その父親役には國村隼。宮崎あおいをイジメるクラスメートの役で、『PAIN/ペイン』の藤本由佳が出演している。雰囲気はそのまま。もともとこういう子なのかな。

 今回の話は25年の年月を越えた、三角関係のドラマになっている。学校で同級生たちからいじめられ、父とふたり暮らしの家庭にも居心地の悪さを感じ、自ら書いた小説の世界に逃避することしかできない登美恵。そんな彼女の前に、颯爽と現れたのが富江だった。「わたしたち友だちになりましょう」と言われ、すっかり富江の虜になる登美恵。だが富江は25年前、登美恵と父・和彦とも恋人同士だった。彼女は一度殺されたが、再び蘇って和彦の前に現れたのだ。「あの頃に戻って」と言う富江は、和彦に娘の殺害をそそのかすのだが……。

 このシリーズはいつも富江を巡って男たちが殺し合いをするのが常なのだが、今回はちょっとひねって、父親と娘と富江の三角関係のドラマになっている。自分を無条件に受け入れてくれる友だちがほしいという、登美恵の切実な気持ち。25年前に失われた初恋の相手を取り戻したいという、父親の秘められた気持ち。それが富江の登場でかき立てられ、火花を散らしてぶつかり合う。父親役の國村隼は、富江への抑えがたい愛の衝動と、娘に対する愛情の板挟みになって苦しむ様子を好演。大人の男と富江という組み合わせは今までなかったものだけに、それだけでも新鮮だったりする。

 ただしサスペンスとしてもホラーとしても、それほどできのいい映画ではない。『コンセント』で抜群のモダンホラーセンスを見せた中原俊監督にしては、ずいぶんと生ぬるい映画だと思う。登美恵を演じる宮崎あおいはまずまずだが、富江役の安藤希があまり魅力的に撮れていないのも残念。もともとそれほどセックスアピールのある女優ではないから、これは脚本時点でエピソードに工夫が必要だったのか。でも『コンセント』の市川実和子も、特別なセックスアピールはないか……。安藤希のファンにとっては、彼女の全裸入浴シーン(?)も拝めるし、エンディングでは彼女が主題歌を歌うというおまけもある嬉しい映画かもしれません。

2002年6月29日公開予定 銀座シネパトス
配給:大映

(上映時間:1時間31分)

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主題歌CD:羽根(安藤希)
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原作:富江(伊藤潤二)
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