スパイダー

2002/05/15 AMCキャナルシティ13・シネマ8
犯罪心理捜査官アレックス・クロスが主役の『コレクター』続編。
今回も主人公が難しい誘拐事件の捜査に挑む。by K. Hattori

 犯罪心理捜査官アレック・クロスを主人公にしたジェイムズ・パタースンの原作を、モーガン・フリーマン主演で映画化したサイコサスペンス映画第2弾。監督はゲイリー・フレダーから、『狼たちの街』『ザ・ワイルド』のリー・タマホリにバトンタッチした。前作『コレクター』では連続女性誘拐事件を解決に導いたクロスだったが、今回の映画は彼の手痛い失敗から幕を開ける。潜入捜査をしていた同僚を、小さな判断ミスから目の前で死なせてしまったのだ。そのショックから立ち直れないまま捜査の一線から離れて数ヶ月を過ごしていたクロスは、自宅にかかってきた電話によって誘拐犯からの挑戦を受ける。ワシントンDCの一流私立校から、上院議員の娘が白昼堂々と誘拐されたのだ。犯人は教師として数年間も学校に勤務し、学校を警備するシークレットサービスらをまんまと出し抜いて少女を連れ去った。クロスは警備責任者だったジェシーと共に、犯人追跡のための捜索活動を始める。はたして犯人の目的は?

 主人公クロスの捜査パートナーとなるジェシーを『マーサ・ミーツ・ボーイ』のモニカ・ポッターが演じ、彼を名指しして挑戦状を突き付ける不敵な犯人をマイケル・ウィンコットが演じている。誘拐される少女役は『パトリオット』『アトランティスのこころ』のミカ・ブレーム。他にもペネロープ・アン・ミラーやマイケル・モリアーティなど、実力のある俳優が出演して映画の土台を固めている。だがこれだけの顔ぶれを揃えても、主演のフリーマン以外は小粒な印象に収まってしまった。最初から最後まで、フリーマンがひとりで全体を切り盛りしている印象だ。サスペンス映画として決定的な弱点になっているのは、犯人のソーンジという男に、主人公クロスと互角に対決できるだけのカリスマ性が欠けているところ。ウィンコットほどの俳優がそれを演じられないはずはないのだから、これは脚本と演出に原因があるように思う。僕は犯人が何を目的として誘拐事件を起こしたのか、その動機がそもそもわからなかった。彼は大きな事件を起こしてクロスに接近することで、彼からカウンセリングを受けたかったってことなんでしょうか。だったらロシア人少年の誘拐はいったい何だろう。リンドバーグの息子誘拐事件を犯人が模した理由も、なんだか謎めいたほのめかしばかりで釈然としない。映画の最後にある謎解きとどんでん返しも、「筋道立ててクロスから真犯人を指摘されたあと、警察はいったい何をしてたんだ?」という疑問がわいてくるものだった。

 こうした欠点がありながら、それでもこの映画がそこそこ面白く観られるのはなぜか。それはひとえに、モーガン・フリーマンの存在感が貫禄たっぷりで、安心して観られるからだと思う。ストーリーの多少の不整合も、主人公がそれで納得するなら観客も一緒になって納得してしまう。このクロス役はフリーマンの当たり役。肉体派のアクションを見せるわけでも、抜群の推理力を見せるわけでもない、人柄だけが秀でたヒーローです。

(原題:ALONG CAME A SPIDER)

2002年5月11日公開 みゆき座他・全国東宝洋画系
配給:東宝東和

(上映時間:1時間43分)

ホームページ:http://spider.eigafan.com/

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サントラCD:ALONG CAME A SPIDER [US IMPORT]
原作:多重人格殺人者(上)(下)
原作洋書:Along Came a Spider
前作DVD:コレクター   関連DVD:リー・タマホリ
関連DVD:モーガン・フリーマン   関連DVD:モニカ・ポッター

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