ファイナル・レジェンド
呪われたソロモン

2002/05/07 映画美学校第2試写室
ジャン=クロード・ヴァン・ダムがエルサレムの町で大暴れする。
撮影中に紛争が勃発したといういわく付きの映画。by K. Hattori

 ジャン=クロード・ヴァン・ダムの主演最新作は、イスラエルの首都エルサレムを舞台にしたアクション映画。物語の発端は今からおよそ900年前。中世の十字軍兵士が聖地エルサレムで神の啓示を受け、キリスト教・ユダヤ教・イスラム教を統合する「オーダー」という新宗教を立ち上げる。その聖典「ファーザー」の最終章は、教祖の殉教とともにパレスチナの砂漠に姿を消した。考古学者のカフメイヤー教授は失われた最終章を発見して翻訳するが、それは現代に生き残るオーダーの信者たち、特に武力革命を唱える過激な指導者たちにとっては都合の悪いものだった。イスラエルを訪れたカフメイヤー教授は、何者かに誘拐されてしまう。ヴァン・ダム演じるルーディ・カフメイヤーは、父の失踪の知らせを受けてイスラエルに入国。だがルーディの目の前で、父の親友だったフィンリー教授が殺されてしまう。警察に拘留されたルーディは、国外退去を命じられるのだが……。

 物語はオーダー教団にまつわる陰謀と、エルサレムの地下に眠る古代イスラエルの秘宝探索とに分裂し、かなりまとまりの悪いものになっている。映画の原題を観る限りでは、物語の焦点はオーダー教団にあるようだし、主人公につきまとうヒロインの素性なども含めて、もともとこの話が教団を巡る陰謀を中心に組み立てられていたらしいことがわかる。だったらソロモンの財宝を巡る地図云々という話は、まったく余計だと思うのだ。これは完全に物語が混乱している。栄華を極めたソロモンの秘宝にしては、映画に登場する財宝はカビくさくてショボイのも気になった。僕はてっきり、財宝が既に盗掘された後で何も残っていないのかと思ったよ。

 主人公が考古学や骨董の知識を生かして盗みを働くプロの泥棒で、その父親が世界的に有名な考古学者という設定。これは「インディ・ジョーンズ」シリーズからのアイデア借用でしょう。もちろん本家のインディは泥棒ではないけれど、やっていることは泥棒と変わらない。この映画はそのあたりを割り切って、「父は学者で、息子は泥棒」としてあるところがサッパリしている。しかしそれならそれで、父親の救出したり警察から逃げたり裏をかく際に華麗な盗みのテクニックを使うなど小技を利かせることもできそうなものなのに、この映画はそれをせずにひたすらヴァン・ダムが暴れ回るだけというのは芸がなさ過ぎるようにも思う。まぁこうした頭の悪さが、ヴァン・ダムの映画らしいと言えばそれまでだけど。

 映画の見どころはやはり、実際にエルサレムでロケしたことで生まれる臨場感にある。嘆きの壁、神殿の丘、岩のドームなどの名所旧跡は、そのままさまざまな宗教の聖地でもあるのだが、この映画にはそうした風景がふんだんに盛り込まれているのだ。正統派ユダヤ教徒の格好をしたヴァン・ダムが、警察相手に大立ち回りを演じるというシーンもユーモアがあって面白い。物語のチャチさを、2千年以上の歴史を持つエルサレムの風景が補って、それなりに観られる映画にしている。

(原題:THE ORDER)

2002年6月1日公開予定 銀座シネパトス他
配給:ギャガ・ヒューマックス 宣伝:LIBERO

(上映時間:1時間48分)

ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/final-legend/

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