天国の口、終りの楽園。

2002/05/02 GAGA試写室
『リトル・プリンセス』のアルフォンソ・キュアロン監督の最新作。
少年ふたりと年上女性ひとりのロードムービー。by K. Hattori

 アルフォンソ・キュアロン監督の最新作は、祖国メキシコの都市と自然を背景にしたロードムービー。僕はこの監督が『リトル・プリンセス』や『大いなる遺産』で見せた、映像の人工美に惚れ込んでいたのだけれど、今回の絵作りはそれらとは正反対。このスタイルがキュアロン監督本来のものなのか、それともハリウッドのスタジオで十分に予算をかけて作っていた映画の方が監督の嗜好に合っているのか、そのあたりはちょっとわからないけれど、僕はこの映画を観て「こういう映画も撮る人なのか」と思った。この映画はメキシコで記録的なヒット作になったということだけれど、それは映画の内容云々以前に「ハリウッドで成功したメキシコ人監督が祖国に戻ってきた!」という部分が大きいのではないだろうか。例として適当かどうかはわからないけれど、日本で言えば北野武監督に対する評価みたいなものかな。あるいは宮崎駿とか。僕はキュアロン監督の作品は『リトル・プリンセス』と『大いなる遺産』しか観ていないけれど、古典的な児童文学や小説を原作にしたこれらの映画よりは、今回の『天国の口、終りの楽園。』の方が好き勝手なことがやれて、この監督本来の持ち味が出ているのかもしれない。脚本を書いたカルロス・キュアロンは監督の実弟。ヴェネチア国際映画祭で脚本賞受賞した。

 幼馴染みのフリオとテノッチは17歳の高校生。ガールフレンドたちが家族と海外旅行に出かけてしまったため、男ふたりで夏を過ごすことになった。親戚の結婚式で美しいスペイン人女性ルイサと知り合ったふたりは、彼女の気を引くため「天国の口」という美しい海岸までドライブしようと誘う。だが彼女はテノッチの従兄の妻だった。な〜んだ、ガッカリ。だが数日後、出張中の夫から「お前以外の女を抱いた」と電話で告白されたルイサは家出を決意。身の回りの荷物を鞄に詰め込んで、フリオとテノッチと一緒に「天国の口」に向けて出発する。面食らったのは少年たちのほうだ。だって「天国の口」なんて、口からでまかせの嘘だったんだから。でもこの機会を逃したら、二度とルイサとお近づきになるチャンスはない。こうして3人のあてのない旅が始まる。

 ひとりの女性と少年ふたりのロードムービーで、テーマになっているのは人間同士の信頼関係や、愛情や、孤独や、運命といったものなのだと思う。ただしそれを真正面から描くのではなく、セックスというモチーフを通して描いているところが面白い。少年ふたりがとにかくやりたい盛りの17歳で、そこに妙齢の美女がくっついていくのだからたまらない。映画は導入部からいきなり画面の半分がボケボケになるセックスシーンではじまり、映画終盤まで常に発情しっぱなし。

 ヒロインのルイサを演じているのは、スペインの女優マリベル・ベルドゥー。『アモーレス・ペロス』のガエル・ガルシアがフリオ、『夜になるまえに』のディエゴ・ルナがテノッチを演じているが、ふたりは実際に親友同士なんだそうで、息のあった芝居を見せています。

(原題:Y TU MAMA TAMBIEN)

2002年夏公開 恵比寿ガーデンシネマ
配給:ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ

(上映時間:1時間46分)

ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/

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サントラCD:Y TU MAMA TAMBIEN(輸入盤)
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関連DVD:アルフォンソ・キュアロン

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