突入せよ!「あさま山荘」事件
THE CHOICE OF HERCULES

2002/04/23 新宿東映
1972年2月に起きた連合赤軍・あさま山荘事件の完全映画化。
警察内部の確執が面白すぎるのがあだになった。by K. Hattori

 今からちょうど30年前、軽井沢の「あさま山荘」に逃げ込んだ連合赤軍の兵士5名が、管理人の妻を人質にして10日間も籠城するという事件が起きた。人質の安否が気遣われる中、2月28日についに突入作戦開始。激しい銃撃戦の中で警官2名の殉職者を出しながら、犯人は全員逮捕され、人質も無事救出された。この人質救出作戦はNHKと民放で8時間半に渡って生中継され、日本中がテレビの前に釘付けになったという。僕はこの時の様子を何となく覚えている。視聴率は各局合わせて90%近かったらしいが、どのチャンネルを回しても全部があさま山荘からの生中継なのだから、そもそも視聴者に選択の自由はなかったのだ。視聴者が事件の推移をかたずを飲んで見守っていたというのも事実だろうが、子供向けの番組(確か「仮面ライダー」だったと思う)を見たかった僕にとっては、ひどく退屈な1日だった。

 あさま山荘事件で警察側の陣頭指揮を執っていたのが、現在も危機管理のスペシャリストとして活躍中の佐々淳行だった。この映画は彼が書いた事件の回想録「連合赤軍『あさま山荘』事件」を原作にしている。監督・脚本は『金融腐蝕列島・呪縛』の原田眞人。劇中で佐々淳行を演じているのは、原田監督とは多くの作品でコンビを組んでいる役所広司。僕は原作をあらかじめ読んでいたが、活字と映像とでは迫力が大違いだ。あさま山荘事件はテレビでも「昭和の大事件」としてしばしば当時の記録映像が放送されているが、それはすべて弾の飛んでこない距離から望遠レンズで撮った映像ばかりだ。でもこの映画は山荘のすぐそばまで近づき、犯人が山荘の壁にうがった銃丸からライフルをぶっ放すシーンを見せてくれる。フィクションなればこそ生み出せる迫力。警官たちはこんなに近距離で犯人と対峙していたのだ。

 映画の中には、原作を読んで僕も面白いと思ったエピソードが数多く拾われている。ただしそれらはすべてエリート警官である佐々淳行の視点から見た事件であるため、どうしても身内の警視庁を立派に描き、長野県警を縄張り意識ばかりが強い田舎警察として描くきらいがある。当時は実際にそうだったのかもしれないし、こうした警察内部のドタバタは確かに面白い。しかしこうした警察同士の確執や混乱ばかりがクローズアップされた結果、「過激派テロリストと警察の対決」という本来のドラマが薄れてしまったのではないだろうか。この映画の中では、連合赤軍兵士の存在感がいかにも弱いのだ。

 原作では連合赤軍がいかに凶暴なテロリスト集団であったかが詳細に語られているのだが、映画の中の連合赤軍は闇雲に銃を乱射するだけの連中で、軍事訓練を受けた「兵士」という感じがまったくしない。そんな連中を相手に、警察は身内の中の争いに終始して右往左往するばかり。これじゃあ民間人の犠牲も出るし、警官の中から殉職者も出ても当然と、映画を観ている人たちは思ってしまうのではないだろうか。敵が強く見えないと、主人公たちの活躍が格好良く見えないのです。

2002年5月11日公開予定 全国東映系
配給:東映

(上映時間:2時間13分)

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