日雇い刑事〈デカ〉

2002/03/15 映画美学校第2試写室
大人計画の宮藤官九郎や安部サダヲが出演した異色刑事ドラマ。
あの〜、この映画のどこが面白いんでしょうか。by K. Hattori

 劇団大人計画の安部サダヲや宮藤官九郎、HIGHLEG JESUSの今奈良孝行などが出演したビデオ撮りのコメディ映画(だと思う)。監督・脚本・撮影・編集・音楽・演奏を担当して、事実上この映画をまったくひとりで作ってしまったのは、映像作家として映画や演劇、ダンス作品などの劇中映像を作ってきた奥秀太郎。

 不況が一層深刻化した近未来。官公庁もリストラのため、常勤を減らして臨時雇いのパートタイム職員を大幅に増員。それは警察とて例外ではなかった。普段は他の仕事やアルバイトで生計を立て、事件の起きた時だけ一朝呼び出されて捜査に加わるのが「日雇い刑事」たちだ。ある日警察に呼び出された“日雇い”は、同じパートタイム刑事の“ニッキー”や“ブラック”と共に、口に出すのも恐ろしいというある事件の捜査を始める。一方それと同じ頃、東大の学生だが甲斐性なしで行き場のないヤスは、暴力団・長坂組に就職。下っ端の構成員として、組長に金魚のフンのように付いて回る日々。長坂組は最新のITやバイオテクノロジー分野に力を入れている、この業界でも異色の組織だった。だがある日、ヤスは組長の妻と不倫してしまう。だがそれが発覚して追いつめられたヤスは、恩義ある組長に銃口を向けたが……。

 物語自体はどうでもいい。映画としてもどうでもいい。映画は“日雇い”が電話で起こされるファーストシーンから駄目な雰囲気が濃厚に漂い、その駄目さ度合いは映画の進行にあわせてどんどん濃くなっていく。そもそもこの映画、話がまったくデタラメでぜんぜんよくわからない。作っている側はコメディのつもりらしいが、どこがどう面白いのかさっぱりわからない。これは僕の感覚が、この映画の作り手の感覚とずれているということなんだろう。でもこの映画を観てゲラゲラ笑うような人が、はたしてどこにいるんだろうか。少なくとも今回満員の試写室は、映画の最初から最後までほとんど静まりかえっていたように思う。映画終盤に「スタニスラフスキーですね」という台詞があって、そこで少しクスクス笑いがあった程度。でもこの映画は、このクスクス1回しか笑えるところがないのです。

 映画の作り手が、いったい何を狙いとしてこの映画を作っているのかはよくわからない。でも「テレビや普通の映画じゃできそうもないヤバめなこと」を、この映画であえてやろうとする挑発的な部分は感じられる。でもこの映画は、それがやけに中途半端です。やっていることの腰が引けてます。それがもっとも顕著なのは、臨時雇いの刑事“ブラック”を巡って、差別的な台詞がポンポン飛び出す場面です。映画はアナーキーな表現手段なんですから、放送禁止用語だろうが、政治ネタだろうが、差別ネタだろうが、作り手の責任で何でも自由にやればいい。でもそこにピー音をかぶせるくらいなら、そんなものは最初からやめとけと言いたい。やるなら正々堂々とやれ。ひょっとしたらこれもギャグのつもりかもしれないが、かえって不快なだけでした。白けます。

2002年4月27日公開予定 テアトル新宿(レイト)
配給:スローラーナー

(上映時間:1時間33分)

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