ピーピー兄弟

2002/03/07 シネカノン試写室
放送禁止用語を連発する漫才コンビがなぜかテレビで大人気。
兄弟漫才コンビを主人公にしたヒューマンドラマ。by K. Hattori

 メガネのチビでチンチンの小さいことがコンプレックスの兄イクオと、長身で男前でしかも巨根の持ち主の弟タツオは、兄弟して売れない漫才コンビを組んでいる。以前は師匠持ちだったが、そこをしくじって今はストリップ劇場の幕間で色物に甘んじる日々。一人前の芸人になると大言壮語して家を飛び出したはずなのに、生活費を稼ぐためには実家の葬儀屋を手伝わねばならぬこともある。ストリップ劇場の客は兄弟の漫才に冷たい。ある日あまりに客のヤジがひどいことに腹を立てたふたりは、用意したネタを逸脱してひたすら下品な方向に話がエスカレート。ところがそれが客に受けてしまう。偶然劇場に来ていたテレビディレクターの有沢は、楽屋口でふたりをつかまえ「君たち天才だよ! テレビに出てみない?」と強引にスカウトする。新人漫才コンクールに出場することになったふたりは、ストリップ小屋でもやった下ネタ攻勢で現場の客とスタッフを唖然とさせる。だがディレクターの有沢は、漫才の中のきわどい台詞にすべてビープ音(ピー)をかぶせて放送。この伏せ字漫才が視聴者にバカウケし、ふたりは「ピーピー兄弟」としてあっという間に時代の寵児になっていく。

 兄イクオを演じているのはぜんじろう。弟タツオを演じているのは剣太郎セガール。怪しいプロデューサー有沢を演じているのは、日本映画界になくてはならぬ名脇役になりつつある香川照之。葬儀屋を営む兄弟の両親を、田中好子と岸部一徳が演じ、映画初出演のみれいゆが、兄弟の幼馴染み文江役で出演している。監督・脚本はこれがデビュー作となる藤田芳康。脚本は'98年のサンダンス/NHK国際映像作家賞を受賞しており、映画製作にはフランスの製作会社も出資している。つまりこれは、きわめて異色の日仏合作映画というわけだ。

 テレビのトークショーでタレントが実名をあげて話をすると、そこにビープ音(ピー)をかぶせて放送することがある。ピーという音が入るだけで、そこに何やらきわめて怪しげでヤバそうな単語が入っているらしいと視聴者は期待する。最近はテレビ画面にモザイクが入る機会も増えた。本来はプライバシー保護のために使われ始めた手法だと思うが、こうしたピー音やモザイク処理が、さして面白くもない芸能人の雑談を「過激なトーク」に変身させ、CM明けまで視聴者をつなぎ止める特効薬として機能している面も見逃せない。この映画に登場する兄弟漫才は、さして面白くもない下ネタをピー音で「過激な漫才」に演出しているだけ。兄弟の父が言うように「漫才やのうてピーが受けてるだけやろ!」なのだ。

 この映画はこうしたピー漫才を巡るドタバタに、兄弟の確執、両親との問題、文江を巡る三角関係などをからめていく。むしろ映画の中心はこうした人間ドラマの側にある。それによって、漫才の側が少々おざなりになっているのが欠点と言えば欠点。はたしてイクオの考えるネタは面白いのか。文江の妊娠を巡る決着の付け方も、少し歯切れが悪くて映画の後味を悪くしたのは残念だ。

2002年3月30日公開予定 シネ・アミューズ
配給:シネカノン

(上映時間:1時間42分)

ホームページ:http://www.pp-bros.st/

Amazon.co.jp アソシエイトDVD:ピーピー兄弟
サントラCD:ピーピー兄弟(ZABADAK)

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ