重装警察
HIT TEAM

2002/02/28 TCC試写室
ダニエル・ウー主演のポリス・アクション映画。監督はダンテ・ラム。
話の焦点と主役の位置が噛み合っていない。by K. Hattori

 潜入捜査官として武器密輸組織を捜査していたホー刑事は、組織側に正体がばれて銃撃され、下半身不随になる重傷を負う。だが警察はホー捜査官が適切な連絡を欠いて単独行動していたと難癖をつけ、彼を表彰するどころか懲戒免職処分にしてしまう。警察は自分たちの不手際による捜査の失敗を、ホー刑事になすりつけるつもりなのだ。親友の同僚警官4人はこれに憤慨し、自分たちの手でホーを救うことを決意する。3ヶ月以内に手術をすれば、彼の体はまた元通りに治る。4人で力を合わせ、手術費用をかき集めるのだ。だが通常の方法では、海外で手術を受けるための費用など集まるはずがない。4人は入念な準備の上で、ホーに傷を負わせた武器密輸組織の金庫から金を奪おうと考える。だがこの計画は失敗した。奪った金は目標額に遠く及ばず、しかも現場で組織のメンバーに顔を見られたことから、現場にいた人間を皆殺しにするハメになってしまった。これによって事件は表沙汰になり、警察の特殊捜査隊が事件捜査に乗り出した。4人は不足した金を補充するため、再度組織の金を狙う。だがそこでは組織の殺し屋たちが待ちかまえ、警察も犯人逮捕のための網を張っているのだった。

 監督はダンテ・ラム。主演のダニエル・ウーは事件を捜査する特捜隊の隊長ツォンを演じているが、ドラマの中心は仲間のために命がけで金を工面しようとする警官たちの友情にある。警察のために命がけで働いていたにもかかわらず、いざというときには組織の体面や保身ばかりを考えて警官個人を守ってはくれない官僚組織。そんな警察に裏切られたと感じた4人の警官は、法を破って自らが警察に追われる身になってでも、自分たちなりの筋を通して仲間を助けようとする。事件を捜査しているツォン隊長は、そんな彼らを追いながらも、彼らの気持ちに同情せざるを得ない。このあたりの葛藤は、ニコラス・ケイジ主演の『ザ・ロック』に登場する、退役軍人の反乱とそれを鎮圧する兵士たちの対立とよく似ている。正義を実現するため同じ組織に忠誠を誓ってきた者同士が、立場の違いからお互いに銃を向けるようになる悲劇。仲間の中でたったひとりだけ警察内に残った男が、仲間を逮捕する作戦に参加する場面の痛々しさ。

 警察組織から袂を分かたざるを得なくなる4人に比べ、ツォン刑事たちのキャラクターがやけに軽薄なものに見えてしまうのはこの映画の欠点だ。ダニエル・ウーひとりでは、相手の放つ「悲劇のオーラ」に対抗できない。ツォン刑事が泳げないという設定や、チームに配属されてきた紅一点の捜査官と他のメンバーの確執など、細かなエピソードでダニエル・ウー周辺のエピソードを補強してはいるが、それだけでは「追う側の葛藤」を肉付けするには足りなかった。もうひとりぐらいベテランの俳優を追う側に配置して、仲間同士が銃を向け合う悲劇性を際だたせる工夫をして欲しかったと思う。

 アクションシーンは力が入っているが、音楽を使いすぎて安っぽい印象になってしまったのは残念だ。

(原題:重装警察 HIT TEAM)

2002年6月15日公開予定 キネカ大森
配給:グルーヴコーポレーション 宣伝:ライスタウンカンパニー

(上映時間:1時間34分)

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