ソウル

2002/02/11 池袋HUMAXシネマズ4
長瀬智也主演の日韓合作映画は、脱力系アクション巨編。
定番の娯楽映画が「普通」に作れないのは致命的。by K. Hattori

 話題の日韓合作アクション大作。長瀬智也演じる早瀬刑事は、犯人護送のため訪れた韓国から帰国直前、たまたま銀行強盗事件に巻き込まれる。犯人グループのひとりを射殺し、逃亡した犯人の顔を唯一目撃した人物となった彼は韓国に足止めされ、現地警察の捜査に協力するように命じられる。だが捜査を担当するキム部長は、捜査の統制を乱す早瀬を露骨に邪魔者扱いする。周囲から孤立し、通訳越しの会話で意思の疎通もうまく図れない中で、早瀬は自分なりに事件と関わっていく。

 監督は『ココニイルコト』の長澤雅彦。脚本は『恋は舞い降りた』の監督で、大ヒット作『ホワイトアウト』の共同脚本も手がけた長谷川康夫。音楽の住友紀人、撮影の山本英夫、録音の小野寺修らも『ホワイトアウト』のスタッフだった人たち。アクション監督のジョン・ドゥホンと特殊効果のジョン・ドアンは『シュリ』のスタッフだ。このあたりが、広告コピーにある《「ホワイトアウト」「シュリ」のスタッフが贈る新世紀フルメタル・アクション超大作誕生!》という言葉の根拠になっている。主演の長瀬智也はこの映画がスクリーン・デビュー作らしい。キム部長役のチェ・ミンスは、『ユリョン』『リベラ・メ』などの作品が日本でも公開されている韓国の人気俳優。通訳役のキム・ジヨンは、韓国のテレビドラマに多数出演している人気女優らしい。

 鳴り物入りで製作公開された映画で、公開から3日目ということもあてか、劇場にはそこそこ大勢の客が入っていた。しかしこの映画、まったく面白くないのだ。外国人の刑事が言葉も習慣も違う異国で事件に巻き込まれ、現地のあぶれ者刑事と協力して捜査に参加していくという展開は、『ブラック・レイン』や『ラッシュアワー』など多くの先例があって特に目新しくはない。そもそも観客はこの映画に、目新しさなど求めていないだろう。サスペンス・アクション映画はどんなに予算をかけようがしょせんB級。観客は1時間半から2時間程度の時間、日常を忘れて映画の世界に没入できる「娯楽性」を求めているに過ぎない。目新しさは不要。テーマ性もメッセージ性も不要。この映画に一流店の高級一品料理の味など求めない。求められるのは、今目の前にある空腹感を満たすジャンクフードの味なのだ。ハンバーガーでもインスタントラーメンでもスナック菓子でも構わない。

 しかしこの映画は、生煮えのインスタントラーメンの味がする。麺は延びきっていて、しかも芯がある。スープはぬるくて、上に載っている具は妙に油っぽくてしかも冷たくなっている。なぜインスタントラーメンが「普通」に作れないのだろうか。説明書通りに作れば、誰にだってそこそこの味になるのがインスタントのよさではないのか。妙な色気を出してあれこれ具をトッピングしてみたり、茹で時間を勝手にアレンジしてみたりして、結局はひどく不味いものができたのがこの映画だよ。

 空きっ腹を抱えた人には、これでもそこそこ食えるだろう。でもまともな味覚の持ち主には受け入れられないぞ。

2002年2月9日公開 日比谷映画他・全国東宝系
配給:東宝

(上映時間:1時間49分)

ホームページ:http://www.seoul-movie.com/

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