カラー・オブ・ライフ

2002/02/04 映画美学校第1試写室
テレビ番組「バミリオン・プレジャー・ナイト」からの傑作選。
監督・脚本は『狂わせたいの』の石橋義正。by K. Hattori

 映像クリエイター・石橋義正が作ったオムニバス映像大作「バミリオン・プレジャー・ナイト」の中から、「LIFE」というテーマで選んだ短編エピソード19編を選りすぐり再構成した劇場版。映画は「家族」「食」「怒りと恐れ」「愛」という4つのサブテーマに章分けされているが、各章の前にホスト役の男性が出てきて偉そうな講釈をたれるという、「ヒッチコック劇場」「トワイライトゾーン」などのTV番組を模した構成になっている。石橋義正はかつて『狂わせたいの』という異色ミュージカル映画を製作して注目されたが、本籍地は映画より現代美術の方にある。映像作品やパフォーマンスの延長に、映画『狂わせたいの』もあれば、テレビ番組「バミリオン・プレジャー・ナイト」もあるのだろう。前作『狂わせたいの』ではいまひとつそうした彼の立場が不鮮明のようにも感じたが、この『カラー・オブ・ライフ』では各エピソードが多種多彩で、より作り手の立場が明快な作品になっていると思う。

 上映時間1時間半弱を19作品で割算すると、単純計算で1話5分に満たない短編ばかり。そのうち半分近い7話を占めるのは、マネキン人形を使ったホームドラマ「フーコン・ファミリー」のシリーズだ。これはジャック&ベティ的な理想のアメリカ人夫婦に息子のマイキーを加えた親子3人のドラマで、顔はいつも笑顔(マネキンだから表情が変わらない)、声はいつも明るく朗らかなのに、話の中身がやけにシリアスだったりグロテスクだったりするというもの。子供は誘拐されてバラバラになって送り返され、パパは浮気現場をママに押えられ、息子のマイキーは悪魔憑きになり、さらに首が飛び、最後はピストルで撃ち殺されてしまうという殺伐とした話なのだ。でもどれも「ワーイワーイ!」で終わってしまう不条理さ。「バミリオン・プレジャー・ナイト」にはもっとたくさんのエピソードがあるようだが、この映画版に収録されているものの中では「パパの浮気」が最高。最後のオチには背筋がゾッとするような恐さがある。

 他に印象に残るのは、ゾンビの母子3人家族のお茶の間ドラマ「ゾンビ・ファミリー」2話。ミッドナイト・クッキング「解剖学」の三白眼姉さん、美人ナースが赤いキューブから飛び出したお尻に注射しまくる「DR.フェロー『注射はお尻に』」、「フーコン・ファミリー」とは逆に人間が人形の振りで踊る「キャッシーズハウス『サムデイ』」などがある。中にはあまり面白さが伝わってこないものもあるけどね。

 全体のコンセプトとしては、和製「サタデー・ナイト・ライブ」のようなものを狙ったのかもしれない。洗練されたブラックユーモアとベタなギャグのコンビネーションはなかなかだ。でも全体かた漂うアートの香り。僕はこの映画を観ながら、やはりモダンアートの作家が作った映像作品『クレマスター1』のことを思い出していた。「スターシップ・レジデンス」の美女エイリアンには、『クレマスター1』に通じるものがあるかも。

2002年3月22日公開予定 シネクイント(レイト)
配給:エス・エス・エム  宣伝:ザナドゥー

(上映時間:1時間28分)

ホームページ:http://www.vpn-tv.net/

Amazon.co.jp アソシエイト「バミリオン・プレジャー・ナイト」関連

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ