竜二Forever

2002/01/31 シネカノン試写室
映画『竜二』と主演俳優・金子正次にまつわる伝説を映画化。
高橋克典が金子正次に成りきる熱演。by K. Hattori

 1983年(昭和58年)。映画『竜二』1本を残して、主演俳優・金子正次は33歳で世を去った。映画『竜二』は自主製作のインディーズ映画だったが、紆余曲折の末に東映系で公開されて大ヒットし、その公開中に死んだ金子正次は映画史に輝くひとつの“伝説”になった。映画『竜二Forever』は、そんな“竜二と金子正次にまつわる伝説”の映画化である。物語は金子正次がアングラ劇団の主催者だった時代から始まり、『竜二』の製作にまつわるゴタゴタ、そして金子正次の死と伝説の誕生で幕を閉じる。だがこれは「金子正次の伝記映画」ではない。映画は冒頭で宣言するのだ。「これもまた架空の物語である」と……。

 主人公・金子正次を演じるのは、「サラリーマン金太郎」の高橋克典。テレビやCMですっかり明るく元気な金太郎のイメージが定着している彼だが、この映画では粗暴でやくざチックな影を感じさせる金子正次役。映画を観る前は「ちょっと違うんじゃないの?」とも思ったのだが、映画は観てみるまでわからないし、役者は演じさせてみるまでわからないものです。この映画の高橋克典は、映画『竜二』で観た金子正次に成りきっている。まるで金子正次その人が乗り移ったような、あの独特の声としゃべり方、あの表情、あの目つき。我々が現在姿を見られる金子正次というのは映画『竜二』しかないわけだが、おそらく高橋克典はそれを何度も何度も繰り返し観たのだろう。この映画の高橋克典は、金子正次を完璧にコピーしていると言っても過言ではない。映画から離れた金子正次に直接接していた友人や知人は、この映画の高橋克典を見て「あんなのは金子じゃない」と言うかもしれない。でもそれでいいのだ。この映画は「金子正次の伝記映画」じゃない。映画『竜二』にまつわる伝説の映画化なのだ。映画『竜二』を観た者にとって、主人公の竜二はそのまま金子正次なのだ。映画の中の竜二の姿は、そのまま、映画の脚本を書き主演した金子正次とだぶる。それでこそ「竜二伝説」ではないか。

 竜二伝説は金子正次の死によって完結する。金子正次がもしガンで死ななかったら、彼の名は伝説にならなかったかもしれない。金子正次の死が伝説化るのは、その死が彼の人生の絶頂期とちょうどぶつかり合っているからだ。 人生の中でもっとも輝かしい瞬間に、その張本人が病院のベッドで血反吐を吐いてのたうち回っているという激しいコントラストが、金子正次という男の壮絶な生き方のラストを締めくくる。この映画は「金子正次の死」を前提に作られている。それまでのすべてのエピソードは、死に向かう道標のようにも見えてくる。劇団でのドタバタも、映画作りの苦労も、最初の入院も、撮影現場での混乱や監督交代劇も、すべては竜二伝説のヴィア・ドロローサ(十字架の道行き)なのだ。

 生江勇二の「竜二 映画に賭けた33歳の青春」を、『シャブ極道』の細野辰興監督が脚色している。劇中に登場する羽黒大介は、松田優作のことです。

2002年3月2日公開予定 シネ・アミューズ
配給:アミューズ・ピクチャーズ

(上映時間:1時間56分)

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