WXIII
PATLABOR THE MOVIE 3

2002/01/24 松竹試写室
パトレイバー・シリーズの劇場最新作で第2小隊は完全に脇役。
主人公は東京湾の怪事件を追うふたりの刑事だ。by K. Hattori

 コミック、OVA、テレビ、映画など、さまざまなメディアに展開して人気を呼んできた「機動警察パトレイバー」シリーズの最新作。『WXIII』とは日本語入力ソフトの名前ではなく、「ウェイステッド・サーティーン(廃棄物13号)」という意味だという。今回は上映時間100分の『WXIII』に加え、上映時間10数分の『ミニパト』という短篇作品が週替わりで併映される。こちらはそのまんま「小さなパトレイバー」という意味で、二頭身にデフォルメされた登場人物達が、劇中に登場する銃やレイバーについてウンチクをたれる。これが全部CGなのだが、絵柄は厚紙に割り箸をくっつけた人形劇みたいになっているのが面白い。

 本編の『WXIII』に戻る。東京湾内の各地で、水中作業中のレイバーが次々破壊されるという事件が起きる。城南署の秦刑事と相棒の久住刑事は、聞き込みを中心に捜査を始めるが、手がかりになりそうなものは何ひとつとして見つからない。そんな中、捜査中に知り合った女性大学講師と急速に親しくなっていく秦刑事。やがて捜査線上に、東京湾に墜落した貨物機の積荷が異様な壊れかたをしていた事件や、墜落事故直後から釣れ始めたオバケハゼなどが浮かび上がってくる。だが事件との直接の因果関係はわからない。そんな時、事件はついに水中から陸地に上がった。湾岸沿いのディスコの駐車場で、停車中の車にいたカップルが襲われたのだ。その直後、秦と久住は驚くべき光景を目にする……。

 パトレイバーの映画だが、映画の中にレイバーが登場するのは最後の10分ほど。映画の中心になっているのは、こつこつと足で捜査を続ける刑事たちの活動だ。若い刑事とベテランの中年刑事という組み合わせは、黒澤明の『野良犬』以来の伝統パターン。この映画はまず「刑事ドラマ」としてかなり高い完成度を持っている。主役となるふたりの刑事のキャラクター造形は緻密で、ふたりが時に協力し、時に反目しあいながら捜査を進めていく様子も雰囲気たっぷり。こうした刑事ドラマが、そのまま怪獣映画になだれ込んでいく面白さ。徹底してリアルに怪獣映画を作ると、なるほどこんな感じになるかもしれない。東京に怪獣出現の兆候が現れたら、最初に動くのは無名の天才科学者でも自衛隊でもなく、警察が日常捜査の延長で捜査し始めるに違いないのだ。これは案外、怪獣映画の盲点だったかもしれない。

 今回の話の原案は、ゆうきまさみのコミック版「機動警察パトレイバー」で発表された「廃棄物13号」と「STRIKE BACK(逆襲)」というエピソードだそうだが、僕はそれを読んでいないので映画がどう脚色したのかは不明。ちなみに今回の脚本はとり・みきが書いている。監督は『機動戦士ガンダム0080/ポケットの中の戦争』の高山文彦。物語のベースにはメロドラマ要素もあるが、それが硬派な刑事ドラマや怪獣映画のスペクタクルとうまく噛み合っている。久住刑事の声を担当した綿引勝彦が、映画のハードな雰囲気作りに一役買った。

2002年3月30日公開予定 全国松竹東急系
配給:松竹

(上映時間:1時間40分+『ミニパト』)

ホームページ:http://www.bandaivisual.co.jp/patlabor/

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