友へ
チング

2002/01/16 ル・テアトル銀座(完成披露試写)
韓国で『シュリ』『JSA』の興行記録を塗り替えた大ヒット作。
しっかりした映画。泣けないけどね。いい映画。by K. Hattori

 韓国で『シュリ』と『JSA』が持つ興行記録をあっさり更新した超話題作。韓国で公開が始まった直後から『友達』というタイトルで日本のメディアにも紹介されていたが、結局邦題は『友へ/チング』に決まった。配給は『シュリ』『JSA』のシネカノンではなく、老舗大手の東宝東和。なんでもこの映画の買付費用は210万ドルとのことだから、シネカノンではとても手が出せなかったんだろうなぁ……。(シネカノンは配給協力として映画の宣伝を担当。)プレス資料によるとこの映画には東宝東和の他にも、「共同提供」としてポニーキャニオンやテレビ朝日など複数の企業が名を連ねている。これはもう、ハリウッド映画並みの体制。チェーンマスターは日比谷みゆき座だから、これはかなり大きな規模になる。韓国映画はこの映画をきっかけに、「アジア映画」という枠から大きく離れて、一般的な「洋画」として認知されるようになるかもしれない。ちなみに韓国ではこの映画が2001年前半の超ヒット作で、同じ年の後半には『猟奇的な彼女』というヒット作も生まれている。なんだか韓国映画は本当に元気なのだ。

 内容については韓国版『スタンド・バイ・ミー』とか『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』と紹介されることが多い。監督・脚本はこの映画が日本初紹介となるクァク・キョンテク。『シュリ』や『JSA』が「南北分断」という韓国独自の社会問題を取り上げていたのに対して、日本の映画人と映画ファンは両手をあげて降参してしまったわけだが、今回の『友へ/チング』はそうした「韓国人にしかわかるまい」というテーマではない。誰もが一度は経験する少年時代の思い出や、多感な思春期に同じ時間を共有する友だちとの友情こそがテーマになっている。小学生の頃は何の屈託もなく悪ふざけし会っていた悪ガキ仲間4人組が、高校生になって再会。だがその頃には少しずつ4人の行動が噛み合わなくなっている。監督の分身らしいサンテクと、裕福な家庭に育ったお調子者のジュンホが、まずまず真っ当に学校を卒業するのに対し、ヤクザの息子のジュンソクと葬儀屋の息子のドンスは町のチンピラになってしまう。親友だったジュンソクとドンスは別々の組織で幹部となり、やがてふたつの組織は激しく対立するようになる。

 監督は1966年生まれで僕と同い年。その少年時代や青年時代を描いたこの映画は、まさに僕自身の少年時代、高校時代、学生時代と重なり合ってくる。ただそれだけに、日本と韓国の社会風俗の違いが嫌でも目に付いて感情移入できなくなってしまう部分もあるのだ。この映画に登場する主人公たちの少年期・青年期の風俗は、日本より10年か15年は遅れている。とても自分と同じ時代を生きているようには見えない。でもこれは韓国が遅れていたわけではなく、日本が異様にアメリカナイズされていたというだけの話かもしれない。また韓国社会が、この10年でダイナミックに変貌したという証拠でもある。韓国映画の元気の秘密はそこにあるのかも。

(原題:友人)

2002年春公開予定 日比谷みゆき座他・全国東宝洋画系
配給:東宝東和 配給協力・宣伝:シネカノン

(上映時間:1時間58分)

ホームページ:http://www.chingu.jp/

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