ゴジラ モスラ キングギドラ
大怪獣総攻撃

2001/12/30 日劇東宝
金子修介監督が念願の『ゴジラ』を監督した見どころ満載の豪華版。
同時上映の『ハム太郎』では寝てしまいました。by K. Hattori

 平成『ガメラ』シリーズで、怪獣映画ファンのみならずSF映画ファンまで熱狂させた金子修介監督が、本人にとっても念願の『ゴジラ』シリーズに挑んだ話題作。昭和29年製作の記念すべき『ゴジラ』1作目の続編という設定で、その他のシリーズ作品をすべて無視。これはここ何作かの『ゴジラ』シリーズに共通する傾向で、観ている方もすっかり慣れっこになっている。結局どんなに工夫して作った続編映画もオリジナル版を越えられないから、何度も何度も「振り出しに戻る」を繰り返すのだろう。どうせなら東宝は来年から2年ぐらいかけて『ゴジラ』1作目を最新デジタル技術でフルレストアし、音響もドルビーデジタルEXか何かにミックスし直して『ゴジラ(誕生50周年記念バージョン)』を大々的に劇場公開すればいいのに。『エクソシスト』のディレクターズカット版が大ヒットしたように、観客の側には「伝説の映画」を劇場で観たいという需要はあると思う。ディズニーだって過去の作品を何度も再上映して、キャラクターの寿命を延ばしているではないか。『ゴジラ』についても、同じようなことを考えたっていい。

 今回の『ゴジラ』はゴジラの他に、モスラとキングギドラ、そしてタイトルからはずれちゃったけどバラゴンも登場するという豪華版。ゴジラは1作目同様の悪役に徹し、日本に上陸してあちこちを破壊しつくしていく。破壊神ゴジラの襲撃から日本を守るのが、モスラやキングギドラなどの「護国三聖獣」という設定だ。怪獣の登場シーンに必須のミニチュアワークやデジタル合成などには、平成『ガメラ』3部作を撮った金子監督の経験が十分に生かされている。出演者も『ガメラ』とかなりダブルのだが、そうしたことも含めて、この映画は金子監督による怪獣映画の総決算なのだ。

 見どころは満載なので、エンターテインメント作品としては水準を大きく超える内容。しかしこの映画、設定そのものに大きな無理があると思うけどなぁ。ゴジラの正体が「太平洋戦争で怨みを飲んで死んだ人々の残留思念の集合体」という設定は面白いけれど、それが物語の中にうまく着地できていないように思う。この映画に登場するのは自衛隊ならぬ「防衛軍」が国防任務に就いているもうひとつの日本であり、前世紀末にはアメリカにゴジラそっくりの怪獣が出現したという設定にもなっている。要するにこれは、我々の知る「日本国」とは別の歴史的背景と国際関係の中にある国が舞台だから、そこで「太平洋戦争で散った人々の残留思念」などと言われても距離感がありすぎるし白々しく感じてしまう。

 戦争犠牲者の残留思念ならそれも結構。しかしそこに「原爆投下や日本の犠牲になったアジアの人々」などというわからんシロモノを結びつけるくらいなら、北朝鮮からプルガサリを呼んだり、韓国からヤンガリーを呼んだ方が早いんじゃないの? まぁ今回のゴジラの設定も面白いことは面白いけど、こうした根本的な怪獣の設定が「味付け」にしかなっていないのはなぁ……。

2001年12月15日公開 全国東宝系
配給:東宝

(上映時間:1時間45分)

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