フォルテ

2001/12/26 GAGA試写室
いくつになっても衰えない男の浮気心の代償は……。
ウォーレン・ベイティ主演のコメディ映画。by K. Hattori

 主人公ポーターは、妻エリーと結婚25周年を祝ったばかりの理想の夫。ハンサムで頭もよく、社交的で友人も多い。妻とふたりの子供を大切にし、建築家としての仕事にも脂がのっている。住まいはマンハッタンの高級アパート。だがポーターは妻や友人たちに隠れて、あちこちで浮気を繰り返している。今まではそれが誰にもばれることなく、平穏無事に過ごしてきたのだが……。ポーターを演じているのがウォーレン・ベイティだから、フラフラとあちこち女遊びを繰り返しているという設定にもすぐ合点がいく。妻エリーを演じるのはダイアン・キートン。幼馴染みの女友達モーナ役にゴールディ・ホーン。ポーターの親友でもあるその夫に、人気コメディアンのギャリー・シャンドリング。主人公の浮気心をくすぐる女たちとして、ナスターシャ・キンスキーやアンディ・マクダウェルが登場し、息子役には現在売り出し中のジョシュ・ハートネットという豪華キャスト。監督は『マイ・フレンド・メモリー』のピーター・チェルソム。これはなかなか楽しい映画だった。

 良くも悪くもウディ・アレンを連想させる映画。主人公は社会的な地位も信用もあるのに、こと女性に対してはひどくだらしない。映画は主人公の「浮気はもうやめだ」という一人称モノローグで始まるが、当然のようにその後もだらだらと浮気が続く。ウディ・アレン作品のヒロインだったダイアン・キートンやゴールディ・ホーンの出演も、この映画が持つ「アレン調」の印象を強める。端役に至るまで意外なほど豪華なキャスト。音楽はジプシー・ジャズで始まり、サッチモで締めくくられる。監督名を隠して「ウディ・アレンの新作です」と言ったら、半分はそのまま通ってしまいそうだ。ただしこの映画にはアレン作品が持つ奥歯に物の挟まったようなところ(それが芸になっているのがアレン作品の魅力だけれど)がなく、ひたすら歯切れがよく、わかりやすい映画に仕上がっている。主人公は自分の行動を自己分析しないし、他人の行動を分析することもない。自分と相手の動きに細かく目を配って、出たとこ勝負で次の行動に移っていく。その様子は心理劇というより、むしろスポーツに近い感覚だ。ウディ・アレンをスポーツ選手にすると、『フォルテ』という映画になるのかもしれない。

 映画の中で面白いのは、映画に許される“偶然”という魔法の力を借りて、画面の中にポーターと関わりのある登場人物達が勢揃いする2つの場面だろう。ひとつはモーナの家をポーターが訪れたところに、ポーターの妻エリーとモーナの夫グリフィンが訪ねてくる場面。そしてもうひとつは、エリーの授賞式にポーターが乗り込んでいくクライマックス。女子トイレに女性出演者たちを全員集合させ、だめ押しにチャールトン・ヘストンの登場で大笑いさせる。ご存じの通りヘストンは全米ライフル協会の会長だけど、ここで彼はそんな自分の肩書きそのものを笑い飛ばすような怪演を見せている。じつに楽しい映画だった。オチが少々ありきたりだけどね。

(原題:TOWN & COUNTRY)

2002年1月19日公開予定 有楽町スバル座・他
配給:ギャガ・コミュニケーションズ 宣伝:ポップ・プロモーション

(上映時間:1時間44分)

ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/forte/

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ