《1st Cut 2001》
フィクション部門(2)

2001/12/06 映画美学校第2試写室
映画美学校の生徒が作った少し長めのドラマ作品2本。
『ふくしゅう』は未熟。『あかるい部屋』は独りよがり。by K. Hattori

 映画美学校の生徒が作った作品を連続上映する《1st Cut 2001》から、長めのフィクション作品2本の試写を観た。以下、簡単に各作品の内容と感想。

 金子裕昌監督・池谷明里脚本作『ふくしゅう』は、上映時間38分。映画はヒロインの青山まりが、両親と同居する自宅の部屋で自殺未遂を起こすシーンから始まる。両親によれば同じような騒ぎは今月だけで3回目だという。このヒロイン、かなり精神的にアンバランスな状態なのだ。彼女は中年の会社社長水原と不倫関係にある。愛し愛される幸福の絶頂を確信していたまりだったが、逢い引きに使っているマンションの部屋に別の女の痕跡を発見したことで、彼女は相手の男の裏切りを知る。まりは水原を巧みに部屋に呼び寄せ、彼が風呂に入っている内に車から銃を取り出して……。

 映画にはところどころ面白い場面もある。特に登場人物たちの会話がなかなか面白い。娘の自殺騒ぎに反応する両親の会話。まりと水原の会話。まりから水原の浮気を聞かされた親友あきの返事。登場人物たちの会話は微妙にチグハグで噛み合わない。そのチグハグさがじつに面白いのだ。ところがこの映画、会話は面白くてもお話は面白くない。そもそもこれはコメディなのかシリアスな映画なのか、それすら僕にはよく把握できなかった。映画の前半は話とすればコメディになり得る物だが、映画はコメディになっていない。かといってシリアスな話にしては、水原役がジーコ内山とうキャスティングはいかがなもんでしょう。ラストシーンも意味不明。

 合田典彦監督・脚本の『明るい部屋』は46分の作品。海外から自分の家に帰ってきた男と、男の家にお手伝いのアルバイトとして住み着いている若い女の不思議な生活を描く。この映画は個々のシークエンスがどれもよくできていて、今回上映された《1st Cut 2001》の全8作品の中ではもっとも完成度が高いと思う。しかし、僕はこの映画がどんな「お話」なのか、さっぱり理解できないのだ。これは説明不足すぎる。映画とは省略法の芸術であり、具体的な説明がない部分を観客が想像力で補っていくことで成り立っているものだ。しかし観客の想像力を喚起するだけのヒントや手がかりは、映画の中になければならないはずだ。おそらく監督としては、よく考えた上で「これで十分にわかるはずだ」という材料を映画の中に提示しているのだと思う。しかし、この映画はその見せ方が弱すぎると思う。僕がボンヤリしていいたのかもしれないが、少なくとも僕にはこの映画のストーリーがほとんど理解できなかった。細部はどうでもいいけれど、大まかなストーリーぐらいは最低限わかるような作品を作っていただける方がありがたい。

 一見すると必要以上に長く感じられるカットやシークエンスが多い映画だが、その反面、あまりにも省略しすぎて必要な説明すら足りなくなっているのがこの映画だと思う。このスタイルは面白いと思うけれど、これはやり方が少々極端すぎるんじゃないだろうか。

2002年1月19日公開予定 ユーロスペース
配給:映画美学校

(上映時間:『ふくしゅう』38分 『明るい部屋』46分)

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