アトランティス
失われた帝国

2001/11/15 ブエナビスタ試写室
太古に海底に没したアトランティスの謎を探る冒険アニメ。
日本アニメの影響をもろに受けたディズニーアニメ。by K. Hattori

 ウォルト・ディズニー生誕100周年記念と銘打った、ディズニーアニメの最新作。古代ギリシャの哲人プラトンによれば、紀元前8千年以上昔、大西洋上で“古アテネ人”の帝国として栄えたアトランティスは、繁栄の絶頂で地震と洪水によって一夜に海中に没して姿を消したという。この伝説は多くの探検家や小説家の好奇心を刺激してきたが、この映画の主人公マイロ・サッチもこの冒険に魅せられたひとりだった。1914年。冒険家としてアトランティスの遺跡を探し続けた亡き祖父の友人と名乗る老人からアトランティス探索の旅に誘われた言語学者マイロ・サッチは、巨大潜水艦ユリシーズ号に乗って大西洋の海底を目指す。途中で巨大な怪物に襲われて潜水艦を失うが、脱出したマイロたちは海底洞窟を抜けて無事にアトランティスを発見する。何とそこには、アトランティス人たちの末裔が住んでいた!

 公開前から日本のアニメ「不思議の海のナディア」に内容が酷似しているのではないかと話題になっていたが、「ナディア」を数回しか見ていない僕にはよくわからない。むしろ僕は宮崎駿の『天空の城ラピュタ』に似ていると思った。空から落ちてきたプリンセス・キーダをマイロが受け止めるシーンなんて、空から落ちてきたシータをパズーが受け止めるシーンとまったく同じじゃないか。水中から古代帝国が浮かび上がるシーンは、『ルパン三世・カリオストロの城』(あるいは『どうぶつ宝島』)だぞ。もっとも僕はこうしたシーンを見ても、「パクリじゃないか!」と怒ったりはしない。日本のアニメは今や世界一の水準だから、ディズニーだって真似しないと面白いものが作れないだけなのです。良いものは必ず真似される。それはアニメの世界も同じです。

 上映時間は1時間35分。この中にいろんなエピソードが詰め込んであるから、見せ場満載であると同時に、展開は都合がよすぎて少々白けてしまう。『ラマになった王様』ぐらい物語がシンプルなら上映時間が1時間半でも構わないが、波瀾万丈の『アトランティス』ではどのエピソードも描写が中途半端になる。例えば最新型の潜水艦があっと言う間に失われてしまうのは、あまりにも性急すぎるしもったいない。個性的な脇役たちのエピソードもあと少しずつ掘り下げると、大団円も爽快さが増すと思う。マイロとキーダのロマンスなんて、たまたま同じ年格好の男女が巡り会ったので一緒にしたというお手軽さに見えてしまうし……。キーダを8千歳にした意味や、アトランティスは海底にあるのか海上にあるのかという位置関係すら不明。他の動力はすべて死んでいるのに、なぜレビヤタンだけ生きてるのかも謎。おそらく作り手はこうした設定の裏まで全部考えたんだと思う。でもそれを映画に盛り込む余裕がなかったのでしょう。

 時代設定が1914年になっているということは、これが第一次世界大戦前夜の物語であることを示している。でもこの映画は、この特殊な年号に設定されている意味をまったく生かそうとしていない。これも疑問だ。

(原題:ATLANTIS: THE LOST EMPIRE)

2001年12月8日公開予定 丸の内プラゼール他・全国松竹東急系
配給:ブエナビスタインターナショナル

(上映時間:1時間35分)

ホームページ:http://www.disney.co.jp/movies/atlantis/

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