カラー・オブ・ペイン オオカミ

2001/10/10 TCC試写室
澤田謙也主演の香港・日本合作映画。出演者は豪華。
『大混乱/ホンコンの夜』のサム・レオン監督作。by K. Hattori

 『ホーク/B計画』の澤田謙也が、香港の若手スターたちと共演したアクション映画。日本人殺し屋の龍也は、仕事の途中でターゲットのボディーガードに撃たれ、脳内には手術で摘出不可能な弾丸が残された。後遺症として彼の目は色を識別することができなくなるが、ある日街の中で若いギャングたちの銀行強盗に出くわした時、彼の目はその一瞬だけ色を取り戻す。生と死が肉薄する緊張感の中でだけ、彼の世界は色づくのだ。龍也は見ず知らずの若者たちの銀行強盗団に加わることにする。若い強盗団のメンバーを演じているのは、『漂流街』『バレット・オブ・ラブ』のテレンス・イン、売れっ子のサム・リー、『花火降る夏』のトニー・ホーの3人。これに若い刑事役で『Needing You』のレイモンド・ウォンがからみ、日本からは後藤理沙と國村隼が顔を出している。香港映画ではあるが、実質は日本との合作だ。

 これだけの顔ぶれが揃っているのだから、普通に作ればそこそこ面白い映画になりそうだが、そこは原案・脚本・監督を担当したサム・レオンの実力。ものの見事にさして面白くもない映画に仕上げている。サム・レオンは『大混乱/ホンコンの夜』の監督だから、これも致し方のないところだろうか。各エピソードがすぐ隣にあるエピソードとつながっていかず、登場人物全員の行動が空回りしている。誰が死に、誰が生き残るのか。そんな基本的なことでさえ、この映画の中には整合性がない。

 文句を言い始めると際限なく文句が出てくる映画なので、あまりあれこれ言わない。この映画の面白さは、もはや映画そのものにはなく、映画の中に含まれている個々の俳優や小さな描写にしかないのだ。例えば國村隼演じる伊藤という男は龍也に殺しの依頼を発注し、龍也が傷つけば守り、危険があれば救おうとするパートナーだが、彼は表の顔として日本料理店を経営している。これは看板としてはラーメン屋なのだが、中身はカウンターに寿司屋のような保冷ケースが据え付けられた日本風居酒屋だったりする。たまたまこういう店でロケしたということなんだろうけれど、ラーメン屋と鮭の刺身という組み合わせがなんだかミスマッチだなぁと思った。要するにこういうところを面白がるぐらいしか、この映画には見どころらしい見どころがないのです。

 この映画の中ではあまり活躍しないけれど、警官のジョーを演じたレイモンド・ウォンは今後の注目株かもしれない。僕はこの人を勝手に「香港のレオナルド・ディカプリオ」と名付けているのだが、モデル出身という端正な顔立ちは日本でも女性の人気を集めそうだ。『Needing You』の御曹司役もよかったけれど、この映画のようなハードなアクションも似合う。まだ日本での公開作が少ないけれど、これからが楽しみです。

 とにかくこの映画は、脚本と演出のサム・レオンがヘボすぎた。出演者は個々のシーンで精一杯の芝居をしていても、それが映画の中でまったく生きていない。澤田謙也にはちょっと気の毒な主演作となっている。

(原題:野狼 COLOR OF PAIN)

2001年12月上旬公開予定 銀座シネパトス
配給:アートポート、アースライズ

(上映時間:1時間40分)

ホームページ:http://www.artport.co.jp/

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