実録・夜桜銀次
九州進攻作戦鮮血秘話

2001/10/09 東映第1試写室
伝説のヒットマン夜桜銀次を相川翔が演じる実録ヤクザ映画。
企画脚本はかつて同じ人物を映画化した高田宏治。by K. Hattori

 東映実録ヤクザ路線全盛時代、菅原文太主演の『山口組外伝・九州進攻作戦』として山下耕作監督によって映画化された伝説のヒットマンの生涯を、相川翔主演で再映画化した作品。昭和30年代。日本最大の暴力団組織山口組が、当時勢力外にあった九州をその手中に収めるために起こした抗争の数々。その中でひとりのチンピラが、九州のヤクザ勢力を挑発するヒットマンとして暴れ回った。彼の名は通称・夜桜銀次。全身に夜桜の刺青を入れ、肌身離さず身につけた拳銃をちらつかせて周囲を威圧する銀次は、九州の組織が放った殺し屋の手で射殺され、これをきっかけに山口組の本格的な九州進出が始まる……。企画・脚本は『山口組外伝〜』の脚本家でもあった高田宏治だから、これは同じ脚本家による『山口組外伝・九州進攻作戦』のリメイクとも言えるだろう。映画は二部構成で、上映時間は合計2時間50分。

 物語の中心になるのは、相川翔演じる山尾国人(通称・夜桜銀次)と、彼の幼なじみの兄貴分、石橋凌演じる石神司郎との間にある固い絆だ。別府の堂本組に身を寄せていたふたりは、組長が何者かに射殺されたことで共に九州を追われることになる。神戸を根拠地とする日本最大の暴力団坂道組の若者頭・山形六郎に拾われた石神を慕って、銀次もまた関西にやってくる。坂道組は九州への進出を狙っていたが、その先兵として九州に地盤のある石神を送り込むつもりなのだ。坂道組が九州に乗り込むには、それなりの大義名分がいる。石神も銀次も、坂道組九州進攻作戦の捨て石なのだ。石神はそれを承知で九州に戻り、銀次は己が死ぬことで石神の身を立てることを願って、あえて無鉄砲な生き方を押し通す。

 映画は前半の第1部の方が面白い。それは相川翔が持つ陽性のキャラクターが、やんちゃ小僧ぶりを発揮する映画前半の銀次にぴったりはまっているからだ。銀次と石神司郎の固い絆や、堂本組長の犯人を捜し出して復讐するというドラマ、さらに1丁の拳銃を巡る因縁話などもあって、物語全体のバランスもいい。しかし映画後半の銀次は、常に死を背負った一種の怪物に変貌していく。こうなると相川翔ではちょっと荷が重いというか、彼のキャラクターに馴染まない役柄になってしまったと思う。映画の第1部が面白いのでつい第2部も観てしまうし、この第2部こそが「九州進攻作戦」のキモなのだが、映画としては第1部の濃厚さや緊張感に到底かなわないと思う。この映画は第1部こそが中心で、第2部はその後日談になるオマケと考えた方がよさそうだ。

 時代考証などがしっかりしているとも言えないが、いわゆるVシネマ型のヤクザ映画よりは贅沢な作り。俳優も要所に芝居巧者のベテランを据え、撮影も黒が締まったそれなりの絵作りをしている。監督は『あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE』の成田裕介。銀次の姉・静江を金久美子が演じ、銀次の妻を冨樫真が演じている。ゲスト出演の松方弘樹は美味しいところを持っていった。平泉成はちと軽すぎてミスキャストかも。

2001年10月20日公開予定 
新宿ジョイシネマ、名古屋ピカデリー・他全国順次
配給:東映、東映ビデオ

(上映時間:2時間50分)

ホームページ:http://www.toei-video.co.jp/

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