グリッター
きらめきの向こうに

2001/09/04 ヤマハホール
人気歌手マライア・キャリー初主演作は'80年代版『スタア誕生』。
マライアが歌うシーンには圧倒的な迫力がある。by K. Hattori

 人気歌手マライア・キャリーの初主演映画。彼女はヒロインのビリー・フラクを演じると同時に、音楽総指揮という肩書きでもクレジットされている。歌に関しては天才的な才能を持つヒロインが人気DJに才能を見出され、彼の後押しでメジャーレーベルと契約。いつしかヒロインはDJと深く愛し合うようになる。だが彼女の人気が上昇するのと反対に、DJは仕事を失い少しずつ過去の人になっていく。そんな彼を支えようとするヒロインだったが、やがて大きな悲劇が……。原案としてシェリル・L・ウェストという名前がクレジットされているが、これって原案じゃなくて「翻案」じゃないのか。

 原作は過去に何度も映画化されている『スタア誕生』です。そもそものオリナルは1932年の映画『栄光のハリウッド』だろう。これが'37年にジャネット・ゲイナー主演で『スタア誕生』になり、'54年にはジュディ・ガーランド主演で再度リメイク、'76年にはバーブラ・ストライサンド主演で3回目のリメイクが行われている。その後『スタア誕生』のリメイクと銘打った作品はないが、無名のヒロインが業界の有名人に見出され、彼と愛し合い結ばれるが、ヒロインの人気が上がるのと反対に彼の側は落ちぶれて最後は悲劇が起きる……というストーリーの定型はさまざまな映画に転用されている。例えばミシェル・ファイファーとロバート・レッドフォードが主演した『アンカーウーマン』は、テレビ報道の世界を舞台にした『スタア誕生』型の物語。音楽業界を舞台にした『グレイス・オブ・マイ・ハート』も似たようなパターン。『グリッター/きらめきの向こうに』も、形を変えた『スタア誕生』だと断言できる。

 物語の時代背景は1983年。大型ディスコの全盛時代であり、ミュージッビデオが大量にあふれ出した時代。日本の高校生が土曜日の夜になると「ベスト・ヒットUSA」を必ず見ていた時代です。この映画は当時の社会風俗や音楽業界の雰囲気を、物語の中にたっぷり盛り込もうとしている。コーラス歌手がスター歌手の吹き替えをしているという“疑惑”や、ヒロインが恋人にヤマハの「DX7」をプレゼントするというエピソードなんて、いかにも'80年代前半という感じがする。

 マライア・キャリーは『プロポーズ』で映画出演の経験を持っているものの、格的な演技が要求されるのはこれが初めて。本来は新人の周囲をベテランで固めて厚みのあるドラマ世界を作るべきなのだろうが、この映画はマライアひとりに花を持たせるためか、これといった脇役陣がいない。ドラマ部分は定番ストーリーに助けられているものの、やはり平板な印象に収まってしまう。しかしひとたびマライアが歌い始めると、スクリーン一杯にスターのオーラが輝き始めるのはさすが。ひとつの曲を歌いながら彼女の人気上昇ぶりをモンタージュするシーンなんて、まるで『雨に唄えば』みたいで楽しかった。ラストの熱唱はバーブラ版『スター誕生』みたい。映画としてはそこそこの水準。ファンは必見でしょう。

(原題:GLITTER)

2001年10月公開予定 みゆき座他・全国東宝洋画系
配給:ソニー・ピクチャーズエンターテインメント
宣伝:マンハッタンピープル
(上映時間:1時間44分)

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