シャム猫
ファーストミッション

2001/08/30 東映第1試写室
モンキー・パンチ原作・総監修のレディース・アクション・アニメ。
設定は面白そうだが人物の魅力が乏しい。by K. Hattori

 「ルパン三世」のモンキー・パンチが原作と総監修を担当したアニメーション映画。内閣官房直属のテロリスト対策チーム「シャム猫」の活躍を描くアクション編。物語の舞台は西暦20XX年。FM局の人気DJジュンとナオミだが、もうひとつの顔は内閣官房・粟田口の下で働く対テロリスト部隊「シャム猫」のメンバーだ。その存在も活動も、政府内のごく一部の人間しか知らない極秘事項。お台場の国防軍研究施設が国際テロ集団に占拠され、新開発の秘密兵器アルテミスが彼らの手に落ちる。「シャム猫」は国防軍の特殊部隊と協力して、国際テロ集団を殲滅しようとするのだが……。

 物語の世界観が現実と虚構の入り交じったものになっているのは構わないのだが、それが悪しき折衷主義になっている。物語の舞台は近未来なのだから、自衛隊が国防軍に昇格していても構わないし、内閣官房直属の対テロ組織があっても構わない。お台場に原発があろうが、軍の研究所があろうが構わない。しかしテクノロジーの進歩速度を考えると、あの秘密兵器はいささかオーバースペックすぎるのではないか。最終兵器と言う割には、やけにチンケな破壊力しか持ち合わせていないのではないか。この映画の中では、物語の世界の一部を現在の社会やテクノロジーの延長で考え、別の部分は「未来だから」「虚構だから」という理由で荒唐無稽なファンタジーにしてしまう。東京の地形や地理はそのまま現実を反映しているのに、戦艦三笠を「みさか」にしてしまうあたりで、最初からこの映画の腰の引けた態度が見えてしまうのだ。「シャム猫」は存在が極秘だという割には、警察や軍隊の前に平気でその素顔をさらしている。彼女たちがFM局でDJをやっている理由はどこにある?

 もっともこうした土台のチグハグさ自体は、「ルパン三世」のモンキー・パンチ的な世界だと許してしまうこともできる。テレビや映画の「ルパン三世」シリーズだって、現実と虚構を組み合わせて摩訶不思議な世界を作り上げているからだ。『シャム猫』の不利はヒロインふたりを含めた登場人物のキャラクターが、まだきちんと固まっていないことかもしれない。ジュンとナオミのキャラは「かっこよくて、強くて、美人」という以外に明確な人物像が見えてこないし、彼らの上司である粟田口の人物像もよくわからない。「シャム猫」に対抗意識を持ちながら、やがて彼女たちに協力する軍特殊部隊の石堂隊長もただ出てくるだけ。何も活躍することなくただ「シャム猫」の活動を指くわえて見ているしかない刑事コンビも、あまり魅力的な人物としては描かれていない。今回は「ファーストミッション」と銘打っているので、ひょっとしたら今後シリーズ化して各キャラクターが固まってくるのかもしれないが、本来ならこの最初の作品で、キャラクターそれぞれの魅力をきちんと観客に伝える工夫をすべきだったと思う。人物設定という骨組みの上に、どうキャラクターを肉付けしていくかという部分で、この映画は少し物足りないように思える。

2001年10月6日公開予定 銀座シネパトス
配給:アート・ポート、アースライズ
(上映時間:1時間30分)

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