ファイナルファンタジー

2001/08/17 GAGA試写室
人気ゲームの映画化。話はともかく映像はすごいと思う。
映像だけでも一見の価値ありだ。by K. Hattori

 人気ゲームの劇場版という触れ込みだが、僕のようにゲームと無関係に生きいる人にもわかる内容になっている。物語は今回の映画用に作られたオリジナルとのことだが、見どころは、登場人物からクリーチャー、メカ、背景まですべてCGでゼロから作ったという映像部分だろう。原作・製作・監督はゲーム版の作者でもある坂口博信。ハワイに専門のスタジオを作り、百億円以上の製作費をつぎ込んで作った破格のSF大作だ。物語の舞台はそう遠くない21世紀後半の地球。宇宙から飛来したファントムというエイリアンが地球を侵略し始め、人間たちは地球上のあちこちに作られたバリアシティ閉じこもるように生活している。人間側は圧倒的に劣性だが、衛星上から巨大なビーム兵器でファントムの本拠地を攻撃する計画が進められている。だがバリアシティの発明者でもあるシド博士は、ファントムのエネルギーを無効化する研究を進めており、強硬なビーム攻撃には批判的だ。彼は共同研究者のアキと共に、ファントム無効化に必要な8つの生命体を探し求めている……。

 エイリアンの地球侵略という古典的なSFモチーフをベースに、8つの生命を集めるという宝探し的な要素、エイリアンに強硬な姿勢を取る軍と科学者の対立、地球をひとつの生命体とするガイア仮説などをちりばめ、さらにヒロインのアキと対ファントム部隊の隊長グレイの微妙な関係や、対ファントム部隊の個性的な面々のエピソード、軍強硬派の筆頭ハイン将軍のアキたちに対する猜疑心と敵意などがからまり合う物語。壮大な世界観を背景にした内容盛りだくさんの作品だが、これを1時間46分に手際よく納めていて中だるみしない。物語の風呂敷を広げすぎているところや、話のつなぎに飛躍がありすぎる部分も感じるが、それを勢いで乗り越えてしまう図々しさも兼ね備えている。なかなか大した物だ。

 しかしこの映画の見どころは、そんなSF物語の部分にあるのではない。徹底して緻密に描かれたCG映像こそがこの映画最大の見もの。この映画の話にノレなかった人も、この映画の映像には目を見張るに違いない。モーションキャプチャーを使ってキャラクターを動かしているが、これがじつにリアル。何も芝居をしていない時でも、人物の身体は無意識に動く。その無意識の動きまで、モーションキャプチャーはしっかり絵として拾ってくるのだ。その生々しさは人間の俳優と遜色ない。さらに顔の表情にも驚いた。まぶたやアゴ、唇などのちょっとした動きで、登場人物たちがじつに表情豊かな感情表現を見せてくれる。この映画で難点があるとすれば、それは登場人物の手の動きだろう。手は関節が多いし、指先のちょっとした動きひとつで千変万化の表情やニュアンスを作り出す。それがまだぎこちないのだ。

 物語の弱さや絵のぎこちなさなどを割り引いても、この映画は「21世紀の新しい映画への道しるべ」として映画史に残ると思う。映画史に残っても観客の記憶に残らない映画。それが『ファイナルファンタジー』かもしれない。

(原題:Final Fantasy: The Spirits Within)

2001年秋公開予定 日本劇場他・全国東宝洋画系
配給:ギャガ、ヒューマックス
(上映時間:1時間46分)

ホームページ:http://www.ff-movie.net/

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