COWBOY BEBOP
天国の扉
Knockin' on heaven's door

2001/08/08 SPE試写室
熱狂的なファンが多い「カウボーイビバップ」の劇場版新作。
アクション満載で作品はかなり高水準のできばえ。by K. Hattori

 '98年にテレビ放映されたテレビアニメ「カウボーイビバップ」の劇場版。テレビ放送されている最中ならともかく、それから何年もたって劇場用アニメが作られるというのは、作品のクオリティの高さや物語の面白さに対するファンの評価が高いからなのだろう。僕はテレビ版をまったく見ていないが、今回の劇場版を観てなかなか面白いと思った。テレビを見ていなくてもわかる映画を作り手側も目指している様子。物語の背景となる世界観がちゃんと「絵」になっているし、キャラクターの個性も明確なので、いきなり映画から観初めても混乱はしないと思う。もちろんテレビシリーズを見ていれば、さらに何倍も楽しめるのだろうけれど……。

 物語のプロットは『機動警察パトレイバー2 the Movie』('93年)に似ていると思う。たぶん最初のアイデアはまったく違うところから出発したんだろうけれど、脚本をいじくり回している内に結果として似てしまったんではないだろうか。リアルな日常風景の描写と未来のテクノロジーのミスマッチな融合という「カウボーイビバップ」がもともと持っていた世界観も、『パトレイバー2』と似てしまう一因だろう。映画のクライマックスで荘子を引用したり、音楽がスティーブ・ライヒ風になってしまうのも僕はちょっと苦笑してしまった。『パトレイバー2』との類似は減点にならないけど、この荘子とライヒはもうちょっと工夫が必要だと思う。夜空一面に金色の蝶が羽ばたくという、幻想的で、美しくて、しかも悲しいシーンなのに、ちょっと艶消しでした。

 ハロウィンを目前にしたアルバシティで、盗難車のタンクローリーが爆発する事件が発生。付近に流れ出たガスにより、多数の死傷者が発生した。たまたまこの盗難車を追っていたフェイは、車を乗り捨てた謎の男を目撃。この事件の犯人逮捕に多額の賞金がかけられたこともあり、スパイクたちカウボーイ4人がこの謎の男を追うことになる。男の手首に彫られた刺青から軍関係者に目星を付けた4人だったが、爆発現場にいた男は軍の記録で戦死扱いになっていた。一方別ルートからある製薬会社に目星を付けて潜入に成功したスパイクは、内部が軍関係者によって警備されていることを知る。民間の製薬会社をなぜ軍が警備しているのか……。

 物語の背景をあまり説明せず、登場人物の過去についても観客が自発的に判断する余地を残しておく脚本には好感が持てる。最近はどうも説明過多な脚本が多すぎる中、ここまで説明を省略していく姿勢は偉い。ただし省略しすぎて、わかりにくくなっている部分もなきにしもあらず。この辺のさじ加減は本当に難しい。アクションシーンはなかなか見せる。製薬会社内でのモップを使ったアクションは、香港映画の殺陣みたいでよく考えられてます。肉体の動きのリアリズムと、アニメならではの誇張とケレンがうまく一体化していると思う。全体に非常に丁寧に作られていて、作り手が手抜きしているところが見えないのはいい。好感の持てる作品です。

2001年9月上旬公開予定 渋谷東急3他・全国松竹東急系
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
配給・宣伝強力:東急レクリエーション
宣伝・問い合せ:メイジャー
(上映時間:1時間54分)

ホームページ:http://www.cowboybebop.com/

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