エド・ゲイン

2001/07/31 日本ヘラルド映画試写室
『サイコ』のモデルになった猟奇犯罪王エド・ゲインの半生。
最後のオチは『サイコ』と同じですか……。by K. Hattori

 実在の連続殺人鬼ヘンリー・ルーカスをモデルにしたカルト映画『ヘンリー/ある連続殺人鬼の記録』(監督はジョン・マクノートン)の続編『ヘンリー/もう一つの連続殺人鬼の記録(V)』を撮ったチャック・パレロ監督が、『サイコ』や『悪魔のいけにえ』のモデルになったアメリカ猟奇殺人界のスーパースター、エド・ゲインの生涯を映画化した実録サイコ・サスペンス。主人公のゲインを演じるのはスティーブ・レイズバック。その母オーガスタを演じるのはキャリー・スノッジレス。どちらも'70年代から映画界で活躍する芸歴の長いベテランだが、名前と顔が一致するような有名俳優ではない。監督のパレロもこれがまだ監督2作目。おそらくこの映画のスタッフやキャストの誰よりも、この映画のモデルになった殺人鬼エド・ゲインの方が有名だと思う。

 映画の冒頭とラストには事件当時のニュース映像が挿入されており、それで映画本編をサンドイッチする形になっている。映画の最後には、警察に連行される本物のエド・ゲインの姿も少しだけ登場する。ニュース映像の中でゲインと親交のあった近所の人たちが証言しているが、ゲインはおぞましい猟奇事件とはまったく縁がなさそうな、おとなしい男だった。近所付き合いも悪くなかったし、子供たちにも親しまれていた。この映画はそんなゲインの姿を、実物通りのリアルさで映像化することが目的らしい。ただしこの狙いが、どうにも中途半端。

 映画には散らかり放題になったまのゲインの家や、家のあちこちにある死体オブジェの数々、バラバラに解体されてパーツごとに分類整理された人体器官、ゲインが作った人皮製のボディスーツやマスク、人の皮を張った特製の太鼓、フライパンの中の人肉、地下室につり下げられた解体途中の犠牲者など、今や伝説となっているエド・ゲインの犯罪が次々映画にも登場する。これがすべて実際に起きたことだということに驚いてしまう。しかしこうしたエド・ゲインの猟奇行為は、その後のサイコスリラー映画に取り込まれており、映画作品として改めてゲインの犯罪を見せられても新鮮味は薄い。観客はゲインが精神異常の殺人鬼であることをあらかじめ知っている。ゲインの家の中にどんな物があるのかも知っている。観客があらかじめ知っているものを改めて観客に見せて驚かせるには、見せ方に何らかの工夫が必要だ。

 この映画ではゲインを精神的に支配し続けた母親との関係をクローズアップし、母親が死後もゲインの前に幻影となって現れ、さまざまな犯罪を指示するという筋立てにしている。でもこれってヒッチコックの『サイコ』と同じじゃないか。映画の最後も『サイコ』と同じ。この映画は『サイコ』のモデルになったエド・ゲイン事件を描こうとして、最後は『サイコ』に戻ってしまったわけだ。ヒッチコックはやはり偉大だなぁ。

 劇中でゲインの母親が「使徒信条」を唱える場面があるのだが、これは日本語字幕が奇妙です。「使徒信条」には定訳があるのだから、それを尊重してほしい。

(原題:Ed Gein)

2001年9月中旬公開予定 シネマスクエアとうきゅう
配給:日本ヘラルド映画
(上映時間:1時間30分)

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