Go!

2001/07/26 松竹試写室
カリスマ高校生・高田宏太郎主演の青春ロードムービー。
ピザを届けに東京から長崎までスクーターの旅。by K. Hattori

 『9-NINE』や『バックステージ』など、パッとしない主演映画が続いていた高田宏太郎主演の青春ロードムービー。僕は彼があまり好きではなかったのだが、今回の映画はなかなか面白かった。おそらく現時点での高田宏太郎を代表する作品がこの映画だと思う。僕は高田宏太郎のいつもふてくされている顔や、実力もないガキのくせに言うことだけは一丁前といった雰囲気に辟易していたのだが、今回の映画は「生意気で口先だけは一丁前のガキが旅を通して自分の殻を破る」というテーマ。つまり今まで僕が好きになれなかった「高田宏太郎像」を、この映画がぶちこわしていくというお話なのだ。

 ピザ屋でバイトをしている17歳の高校生・西野康助は、配達途中で女性カメラマン飯塚玲子と衝突しそうになり、彼女の持っているレンズを1本壊してしまう。「うるせえなぁ、弁償すればいいんだろう」と減らず口をたたくものの、金のない高校生にレンズ代は大金だ。部屋にある漫画本やCDを売り、愛用のギターを売ってもまだ弁償にはほど遠い。「お金はもういいわ。そのかわり、あなたの作ったピザが食べたい。それで帳消しよ」と玲子に言われた康助は、その言葉の中にハートマークを見た! 店の女の子にピザ焼きの特訓を受け、ようやく康助が玲子のもとにピザを届けた時、玲子はアパートを引き払って故郷長崎に帰っていた。康助は配達用のスクーターで、一路長崎目指してひた走る。

 学校でも家庭でも満たされることのない心の隙間を、わずか数回しか会ったことのない年上の女性へのあこがれをバネに強引に埋めていく高校生の思いこみ。これはもう純愛とか一目惚れとかそういう問題を超えて、思春期の男の子(まぁ女の子でもいいけど)にしか許されない気持ちの暴走なのだ。同じことを30男がやったらただの気持ち悪いストーカーだもんね。50ccのスクーターで東京から長崎までひた走るという、その場の思いつきをそのまま行動に移せる無謀さ。ピザを届けることで自分と彼女の間に何事かが芽生えるのではないかという勘違い。しかしその無謀も勘違いも、すべてが青春期の少年少女なら許され、かえって応援してもらえる。

 ロードムービーの基本形は移動と相棒の存在なのだが、この映画には主人公の相棒が存在しない。主人公の影のように寄り添う謎のハーレー男が、旅の相棒に見えなくもないが、両者の間に明確なコミュニケーションは存在しない。いわゆる「相棒」とは呼べないだろう。相棒とのやりとりでドラマを作らない分、この物語は主人公が行く先々で出会う人々とのエピソードが盛りだくさんで、展開もスピーディーになっている。その中には首を傾げるものや意味不明なものもあるけれど、物語の流れが速いからあまり気にもならない。下関で出会う修理屋父娘のエピソードなど、要になる部分はきちんと時間をかけて描いていく細やかさもある。なかなか抜け目ないのだ。高田宏太郎の演技が硬く、主人公の内面的な変化が演技の変化として現れないのは欠点だが、これは許容範囲。

2001年9月下旬公開予定 シネ・リーブル池袋・他
配給・宣伝:日活 宣伝・問い合せ:スキップ
(上映時間:1時間48分)

ホームページ:http://www.eiga-go.com/

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