セイブ・ザ・ラスト・ダンス

2001/07/04 東宝東和試写室
ヒップホップをモチーフにした現代版『フラッシュダンス』。
ダンスシーンはなかなか迫力がある 。by K. Hattori

 今年の夏休み映画『パール・ハーバー』で世界中から不評を買っているプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーだが、彼の出世作となったのはジェニファー・ビールス主演の青春映画『フラッシュダンス』だった。1983年製作のこの映画は、映画のテーマ曲となったアイリーン・キャラの歌も大ヒットし、歌と映画をシンクロさせた映画作りが「まるでMTVのような映画だ」と批判されることにもなる。しかしこのMTV手法は翌年に『フットルース』という同傾向の映画も生んだし、ブラッカイマー自身も『トップガン』でその手法を確立させるわけだ。『セイブ・ザ・ラスト・ダンス』はそんなMTV手法の映画を、遅ればせながらMTV自身が作った青春ダンス映画。この映画はかなり露骨に『フラッシュダンス』を意識していると見える。最後のオーディションシーンなんて、一度失敗して音楽ストップ、その後再開して大成功という流れや、その間の審査員の様子まで、『フラッシュダンス』を忠実になぞっている。

 幼い頃からバレエダンサーになることを願い、ジュリアード音楽院に進学しようとしていたヒロインのサラ。だがオーディション当日に母親が交通事故死したことから、彼女はバレエへの道を自ら閉ざしてしまう。父親に引き取られてシカゴの公立学校に通うようになったサラだったが、そこは黒人が生徒の大半を占める地域の底辺校。そこで彼女はヒップホップに出会い、少しずつ明るさを取り戻していく。親しくなったデレクにヒップホップを習ううちに、少しずつ彼に惹かれていくサラ。彼女はデレクの後押しもあって、再びバレエの練習を再開する。サラとデレクはごく自然に愛し合うようになるが、白人のサラと黒人のデレクの交際に、周囲はあまりいい顔をしない。デレクの姉でもある親友シェニールに辛い言葉を投げかけられたサラはひどく混乱し、とうとう彼と別れることを決意するのだが……。

 サラを演じているのはイーサン・ホーク版『ハムレット』でオフィーリアを演じていたジュリア・スタイルズ。デレクを演じているのは『戦火の勇気』にも出演していたというショーン・パトリック・トーマス。どちらも日本の映画ファンにとって、あまり馴染みのない顔だろうと思う。監督のトーマス・カーターにはエディ・マーフィ主演の『ネゴシエーター』があるが、これもあまり強い印象を残す作品ではなかった。つまりこの映画は、監督も出演者も日本ではまったく無名に等しいマイナーな作品なのです。でも『フラッシュダンス』だって、当時は無名のスタッフとキャストの作品だった。青春映画は、世間から何者とも認められていない無名の若者が、何かを通して社会に出ていく様子を描いているのが常。出演者が無名の方が、かえって親しみが持てるのです。

 ダンスシーンが売りの映画なので、さすがに力の入ったダンスが見られます。サラがデレクからダンスの手ほどきを受けるシーンは微笑ましく、ヒップホップ入門としても最適だと思う。観ても損のない映画です。

(原題:SAVE THE LAST DANCE)

2001年8月11日公開予定 みゆき座他・全国東宝洋画系
配給:東宝東和 宣伝:トライアル

ホームページ:http://savethelastdance.eigafan.com/

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